広報誌「かけはし」
  
■2005年11月 No.410

めまい、耳鳴り
   
 10月5日、「めまい、耳鳴り」をテーマに、健保連大阪中央病院耳鼻咽喉科の小林伸枝氏による健康教室が、薬業年金会館において開催されました。
 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

●多様なめまいの症状

小林伸枝氏

 めまいとは、自分は静止しているにもかかわらず、周囲や自分のからだが動いている、回っているという感覚のこと。症状は様々で、天井が回ったり、目が回る回転性のめまい、からだがふわふわしているような浮動性のめまい、からだが傾いているように感じる平衡性のめまい、立ちくらみなどの眼前暗黒感等です。疾患によって特有なめまいが起こりやすくなります。めまいの原因には前庭性と非前庭性があり、前庭性のめまいはさらに、中枢性と末梢性に区別されます。末梢性のめまいは内耳と聴神経に関わるもので、メニエール病や良性発作性頭位めまい症などによるめまいが多く、中枢性は脳の病変等によるもの。

  
●問診で原因を探る
   めまいの診断で最も重要なのは問診です。どんなめまいか、どのぐらいの時間続いたか、どういうきっかけで起こったのかといったことを聞きます。これによって8割方原因疾患が判明します。ここで見落としていけないのは神経症状。中枢性のめまいであれば手足や顔面のしびれ、ろれつが回らない、気が遠くなるなど耳以外の脳神経症状が出ます。特に脳の血流障害や血管障害は激しい頭痛を伴い、命にも関わります。中枢性の脳の神経症状を伴う場合は、CTやMRIの検査をします。耳鳴りや耳がふさがった感じがあるときは耳が原因の場合があるので、耳鼻科で検査をします。検査には蝸電図や眼振の検査、書字検査などがあります。
  
●環境因子の改善で治療
 

 めまいの原因疾患にはいろいろなものが考えられますが、中枢性めまいの場合、椎骨脳底動脈循環不全が一番多く、重大な疾患としては脳の血管障害や血流障害、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあります。
 内耳性のめまいで頻度が高いのが良性発作性頭位めまい症。この原因は耳石器の障害と推定されています。耳鳴り、難聴を伴う末梢性めまいの原因疾患には、ハント症候群、遅発性内リンパ水腫などがありますが、よく知られているのはメニエール病。これは回転性のめまいや耳鳴り、難聴などの蝸牛症状が反復して起こり、脳腫瘍などの原因がないものです。ストレスによってめまいが出るといわれています。その病態は内リンパ水腫で、利尿剤を点滴して聴力の改善が認められれば、メニエール病と診断されます。治療は生活改善が重要で、血流に作用するカフェインやアルコールも控えます。また、聴力をどのように残すかも重視します。
 ほとんどのめまいは内耳や脳などの障害が原因です。しかし、ストレスといった環境要因もめまいを起こす原因のひとつ。治療にあたっては環境因子を改善したり、患者さんを心理的にもフォローするような心身学的なアプローチも、大切であることを覚えておきましょう。