広報誌「かけはし」
 
■2005年11月 No.410
時評

保険者協議会に期待する
― 健保組合も積極的な参画を ―


 国民健康づくり運動「健康日本21」の推進母体としてその役割を期待されている各都道府県単位の保険者協議会は昨年2県をモデル(新潟・宮崎)にスタートした。その後、1年を経過した現在、37都道府県(本年9月現在)で設置されたようだ。この協議会の目的は、医療費の36%を占める生活習慣病を従来の2次、3次予防に加え1次予防面から地域ごとに各種保険者が連携して取り組むことにより、増大する医療費の適正化を目指すものである。これからの我が国の状況を考えるとき、主旨は明解で的を射たものといえよう。しかし、一部の声として現状はそれぞれの利害が複雑に絡む組織の集合体であり、お互いの言い分を主張し合い、実状は「船頭多くして船山に上る」の感があるとも聞く。
 つまり実施主体は各都道府県単位と決められているが“誰が、いつ、どのようにやっていくか”といった具体的な段階になると現場では戸惑いすら感じられるようだ。このことは国が保険者協議会に期待している骨子、「保険者間の連携によるレセプト調査と医療費分析、そしてその結果を生かした地域ごとの疾病予防対策の体制づくり」が口でいうほど容易でないことを伺わせ、この状況は日頃、業務に携わる我々としては少なからず理解し得る。
 とはいえ、一方では健康増進活動の基本は本人の生活圏に根ざした地域単位で考えることの妥当性は高く、今後の検討にあたっては各保険者間での総意による落としどころが焦点となる。しかし先に述べたとおり、検討する場が1年を経過してようやく整い出した段階である。次の段階は各都道府県を中心に保険者協議会運営の主旨をもとに、具体的な実態調査、問題点把握、方向づけ、活動メニューの策定、システム構築、フォロー体制づくり、そして最後の立ち上げへと検討されていくものと思われる。だがその過程ではかなり難しい局面も予測されるが、医療費適正化が火急のテーマとされるなか、効果的かつ迅速な運営が期待される保険者協議会を成功させるためにはどのように生み出し、同時にどのような活動が有効であろうか。
 まず保険者協議会を円滑に運営する工夫として「隗より始めよ」の姿勢で、その先陣役として地域ごとの健保組合が「小さく生み、大きく育てる」ことを念頭にいわばミニ保険者協議会を設置し、そこからの実績を地域全体の保険者協議会へ展開するという構想は如何だろう。特に、我々健保組合員の被扶養者が日頃、地域に根ざした健康増進施策の恩恵を享受していることを考えるとき、この機会に健保組合が意見具申の場として積極的に参画して貢献することは大切なことではなかろうか。次に、保険者協議会への期待機能であるが、国の目指す地域に根ざした都道府県単位の医療保険制度に再編されることにより一部の保険者では従来の画一的な運営を脱皮し、それぞれの立場で保険料率の設定から、事業展開に至るまで柔軟性と特徴を生かした運営も可能となる。その意味では保険者それぞれの競争原理と切磋琢磨による保険者機能のさらなる進化も望める。今回の保険者協議会には医療費適正化の推進はもとより、この機会に是非とも保険者相互が協力し合う土壌を育て、新しい医療保険制度の円滑な運営にも反映させていただきたいものである。

(M・O)