広報誌「かけはし」
 
■2005年10月 No.409
時評

国民運動の大展開を
― 医療費適正化に向け行動をかえよう ―


 8月23日に発表された、厚生労働省統計情報部の「平成十五年度の国民医療費」によると、国民医療費は31兆5千億円で、前年度の30兆9千億円に対し、伸び率では1.9%、金額では実に5868億円の増加となっている。対前年伸び率1.9%の内訳は、人口の老齢化によるものが1.6%(推定約4940億円)であるという。
 これに先立って厚生労働省保険局調査課が8月10日に報告した、「平成十六年度概算医療費(全額自費および労災医療費を除く)」によると、医療費は平成十五年度に比べ、伸び率では2%増、額で6200億円の増加、その内の4分の3(推定約4656億円)が高齢者医療費の増加によるものである。
 平成16年における70歳以上の高齢者医療費の対前年伸び率は総額で3.8%であるのに一人当たり医療費の伸び率は0.3%という。すなわち高齢者医療費が急増している要因は、一人当たり医療費の伸びによる影響よりも高齢者人口が急増しているためであることがよく理解できる。
 さて、医療制度改革の主要課題は、拠出金制度の廃止による新しい高齢者医療制度の創設にあるが、それだけでは問題の解決にはならない。
 高齢者医療制度をはじめ各種医療制度の抜本的改革は当然必要であり、早期に実施されることが望まれる。
 しかし、どのような改革が行われるにせよ、一方で増加し続ける医療費を一方では減り続ける現役世代層で負担せざるを得ないという現実から逃れることはできない。患者負担、公費負担、保険料負担などいずれにせよ、国民が負担しなければならないのである。
 結局は、医療制度の改革と並行して医療費の適正化を進めることにつきるのではないか。適正化の根本は医療費の発生を少なくすること。すなわちひとりでも多く健康な国民を増やすため、地道にかつ最大の努力を続けることである。
 医療費の適正化に向けて多くの健康保険組合が事業主、労働組合と三位一体となって取り組んできているが、その効果は当該健保組合内の活動に留まらざるを得ない。
 先日報告された「健康日本21」の取り組みの中間評価では、各目標値に対する実績値は一部を除いて残念な結果であった。
 「健康日本21」は生活習慣病からの脱却や健康づくりを目指しているが、国民一人ひとりが「自らの健康は自分で守る」ためには、個人の意識と行動の変容を促す啓発活動を全国津々浦々で戦略的に展開することが必要である。
 健保連を含め、国や自治体、医師会などそれぞれ国民への呼びかけを行っているがその効果は如何なものか。意識を揺さぶり行動に結びつくもっと具体的で強い呼びかけや情報の提供ができないものか。
 一方、昨今マスコミにおいても健康づくりや医療関連の番組や記事などブームといっていいほど取り上げられていて、国民の健康への志向は高い。
 健保連、国・自治体・医師会・マスコミが協力し、知恵もお金も出し合いありとあらゆる手段を使って「国を挙げての健康づくり活動」を推進すれば相当インパクトのある展開ができるのではないか。
 この危機を乗り切るために、健保連が音頭をとって国や医師会・マスコミに働きかけ、国民皆健康づくりキャンペーンを企画してはどうだろう。
 今がその時期ではないか。

(T・N)