広報誌「かけはし」
 
■2005年9月 No.408

 
職場のメンタルヘルス

〜気づきとそのかかわり方
   
 8月19日、薬業年金会館で「職場のメンタルヘルス〜気づきとそのかかわり方〜」をテーマに、大阪府こころの健康総合センター相談診療部長の漆葉成彦氏による心の健康講座が開催されました。
 
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●わかりにくい不調
 

漆葉成彦氏

  うつ病など、心の問題は一見するとわかりにくい場合がよくあります。メンタルヘルスに問題をきたす人にはまじめな人が多く、自分の不調や苦しさを表現しない人が多いからです。そのため、ある日突然会社にこなくなったり、自殺を図るケースもあります。心の健康づくりには、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフなどによるケア、事業場外資源によるケアの4つの柱があります。職場におけるメンタルヘルスではラインによるケアが重要です。


●サインを見逃さない
 

  そこで注意したいのがメンタルヘルス不全状態のサイン。仕事面では無断欠勤や遅刻、早退、病欠の増加、物忘れ、月曜日によく休むなど。言動や態度の乱れもサインの一つ。特に、借金が増えたり、酒癖が悪くなった人は要注意。お金を使ったり、お酒を飲むことはストレス解消になり、一時は楽になりますが、そのために周囲から気付かれずひどいうつになったり、自殺を試みることも。
  対人関係のサインでは人付き合いが悪くなったり、人を避ける、人の視線を恐れるといったことがあげられます。同僚と一緒に昼食をとるのがつらく、ロッカールームで昼食をとっているという人もいました。これまで親しくしていない人になれなれしくなり、妙に明るく振る舞うのも自殺の可能性があって危険。そして一番最初によく出るのが身体面。しばしば不眠や頭重、頭痛、食欲不振、倦怠感、疲労感を訴えます。

 
●家族との連携も
    心の問題を抱えていても病気になる直前は見逃されることがよくあります。上司や管理者はメンタルヘルスをよく理解し、サインを見落とさないことが大事です。先にあげたサインを頭に入れて、心の不調をチェックしましょう。不調のありそうな人には仕事や私生活で変化がなかったか確認し、声をかけて話を聞きます。不眠や食欲など、体調のことなら、本人も答えやすいでしょう。その上で不調を訴えていれば、問題の性質を確認し、相談や受診をすすめます。しかし、本人が受診に応じないときはそれなりの理由があるので、それに応えることが大事です。病気が職場で不利に働くのではないかとか、復職制度に不安がある場合があるので、本人の気持ちに寄り添った形で受診をすすめましょう。それでも受診しない場合は内科を受診させてそこから精神科に紹介してもらうのがよいでしょう。家族との連携も十分にとっておきましょう。
  メンタルヘルス面の問題は意識を持って見ていないとなかなか気づきにくい部分があります。心の健康という視点を持ち、身体症状から確認していくことが気づきにつながります。