広報誌「かけはし」
 
■2005年9月 No.408
時評

生活習慣の改善で、医療費削減を
―  一人ひとりでもできる総額抑制  ―


 2004年の日本人女性の平均寿命は、85.59歳で20年連続の長寿世界一となった。男性も78.64歳でアイスランドに次ぐ世界第2位で、男女とも過去最高を更新した。また65歳以上の高齢者は過去最高の2,488万人、総人口に占める割合も19.5%に上昇した。
  一方、少子化も予想以上に進展し、2004年の出生数は過去最低の約111万人で、出生率も1.29と減り続けている。まさに、超少子高齢社会である。
  長寿世界一は本来喜ぶべきものであるが、若年者の5倍弱となっている高齢者1人当たりの医療費が、今後もさらに増え続くことが懸念されている。また、国民医療費のなかで、生活習慣病が占める割合も毎年増加しており、高齢化とともに一層増えていくことが大きな問題となっている。
  生活習慣病予防については、2000年度から21世紀へ向けての国民健康づくり運動である「健康日本21」がスタートし、とくに健康を増進し発病を予防する対策として、一次予防に重点を置いた対策が推進されてきた。その取り組みは、国および地方自治体や健保連を含む多くの各種関連団体により、それぞれの立場で現在まで行われてきた。大阪連合会でも国の助成を受けて、「生活習慣病克服健康づくり事業」等を実施してきた。各健康保険組合においても会社・労働組合と三位一体となって意欲的に健康増進運動を進めているところも数多くある。
  しかし、先頃発表された「健康日本21」の中間評価における各目標値に対する実績値は、一部の項目を除いて残念な結果となった。たとえば、成人(20歳以上)の日常生活における歩数の増加は、策定時の現状値よりも劣っている(男性8,202歩→7,676歩、女性7,282歩→7,084歩)。
  「自分の健康は自分で守る」という言葉のとおり、「健康日本21」が目指している生活習慣の見直しや健康づくりは、個人が主体的に取り組むことが基本である。このような健康づくりに取り組もうとする個人を、行政や各関連団体、健保組合は今までそれをサポートする効果的な施策を実施してこれたであろうか。
  増え続ける医療費をどう適正化するかがわが国の医療制度改革の重要テーマである。その方策は厚生労働省を中心としていろいろ検討されており、その議論も今後本格化してくる。
  しかし、その具体的な抑制目標を設定し、その仕組みを構築しても、それだけで効果を得るのはなかなか難しいが、国民一人ひとりが自覚を持って、生活習慣を改善することにより、健康を保持・増進し、発病を防ぎ、病気の進行を遅らせることができる。このことこそが国民医療費を確実に減らす最善の策であると確信する。
  そして、それをバックアップする各健康保険組合が実施する保健事業の生活習慣病対策の役割が今後一層重要となることを再認識しなければならない。
(K・M)