広報誌「かけはし」
  
■2005年8月 No.407

歯周病による全身への影響
   
 「歯周病による全身への影響」と題し、日本歯科衛生協会顧問歯科医師の紺野理子氏による健康教室が、7月5日薬業年金会館で開かれました。
 
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●歯周病と全身疾患の深いかかわり
 

紺野理子氏

 歯周病は歯茎が歯周病菌に冒され、歯茎が炎症を起こしたり、歯茎や歯槽骨が壊される病気です。歯茎の炎症によって歯周ポケットができ、そこで嫌気性の菌が繁殖することで歯槽骨や歯茎が破壊されます。また、歯周病菌は破骨細胞を活性化させるため、さらに歯槽骨が壊されます。
 歯周病は心疾患や脳血管疾患、糖尿病、肺炎、早産・低体重児などと深くかかわっています。歯周病菌は血液を固まりやすくする物質を放出、これによって作られた血栓が血管を通じて脳に行くと脳梗塞、心臓の血管に行くと心筋梗塞を招きます。また、抜歯をしたとき口腔内の細菌が血液に混じって心臓内膜に達すると感染性心内膜炎を引き起こすことがあります。
 歯周病になると体の防衛反応としてTNF─αという腫瘍壊死因子が分泌されます。これがインスリンの活性を干渉し、血糖のコントロールを不十分にして糖尿病を引き起こしたり、悪化させたりします。糖尿病になると歯周病が悪化するので、悪循環が始まります。
 女性の場合、歯周病菌が体内に入ったときに分泌される物質が胎児の成長を妨げたり、子宮の筋肉を収縮させるため、早産を招くことがわかっています。
 そのほか歯周病は胃潰瘍や肝炎、関節リウマチ、腎炎、骨粗しょう症、皮膚炎などにもかかわりがあると考えられています。

  
●歯垢除去で健康維持
  
   歯周病の一番大きな原因は炎症性の因子、つまり歯垢中の細菌や細菌の代謝産物など。さらに歯石や不適切な補綴(てつ)物、食べ物のかけら、口呼吸などがそれを悪化させます。また、ホルモン失調や栄養障害などの全身性因子も原因の一つ。そのなかで最も重要なのは歯垢中の細菌です。したがって、歯周病予防には歯垢を落とすことが一番大切です。
 歯科の清掃用具で最も肝心なものは歯ブラシです。電動歯ブラシも有効ですが、手で磨くほうが細かいところまで行き届きます。自分の歯並びや歯の形に合ったブラッシングをしましょう。また、歯間ブラシは歯と歯の間を磨くのに有効です。歯周炎のひどい人は収れん作用のある歯磨剤を使用すると、多少歯茎が引き締まります。こうした清掃用具を使って歯磨きをし、歯垢や細菌を落とすことで歯周炎を予防することが、全身の健康維持にも役立ちます。さらに、定期検診を受診したり、プロフェッショナルケアで歯石除去やブラッシング指導を受けるのも大切です。そして一番気をつけたいのが自己管理。ブラッシングに加え、デンタルフロスで歯間や歯と歯茎の間を掃除し、病原菌を除去しましょう。歯垢と歯周炎は深いかかわりがあります。ぜひ、しっかり歯磨きをして歯周病を予防してください。