広報誌「かけはし」
 
■2005年7月 No.406

 
メンタルヘルス問題で休業した
労働者の職場復帰について
   
 6月22日、薬業年金会館で「メンタルヘルス問題で休業した労働者の職場復帰について」をテーマに、大阪府こころの健康総合センター相談診療部長の漆葉成彦氏による心の健康講座が開催されました。
 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

●職場復帰の5つの流れ
 

漆葉成彦氏

 昨今、心の健康問題で休業した労働者の支援が大きな問題になっています。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き※」では職場復帰支援の5つの流れを示しています。
 第1ステップは病気休業開始と休業中のケア。まずはメンタルヘルス不全状態に気づくこと。そして診断書は病名にこだわらず、診察時の状態や治療内容、治療方針、治療期間の見込み、休職の必要性の有無、休職に要する期間などが書いてあること。休業中のケアで大事なのは、管理監督者による本人のおおよその状態の把握です。
 第2ステップは主治医による職場復帰可能の判断。復職診断書の提出に先立ち、主治医と担当者が連絡をとることです。診断書に必要な情報は発病から初診までの経過、治療経過、業務に影響を与える症状や薬の副作用など、現在の状態。就業上の配慮や症状悪化時の注意など。
 第3ステップが職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成。職場復帰支援プランでは、心の健康の3要素=精神疾患、職場の問題、本人の能力・性格・家族の問題を考慮に入れ、本人の状態と職場の状況から総合的に判断して復職の時期を決めます。
 職場復帰の判断基準は1通勤時間帯に一人で安全に通勤できる、2会社が設定している勤務時間の就労が可能、3業務に必要な読み、書き、話す能力が回復している、4疲労が翌日までに十分回復できる体力がある、5仕事中に眠気がなく注意力、集中力が回復している、の5点。通院期間や薬の内容も確認が必要。


●復帰は原則現職
 

 復職先は原則、現職復帰です。リハビリ勤務あるいは段階的復職の可能性も考えます。これができる場合、より早い段階で職場復帰を試みることができるので、結果的に早期復職につながります。しかし、傷病手当金受給中の出勤はどうかなどの人事労務管理上の問題があるため、十分な検討が必要です。
 第4ステップは最終的な職場復帰の決定。事業者側で復職判定委員会などを設置し、責任の所在を明確にする方がいいでしょう。
 第5ステップが職場復帰後のフォローアップ。一番大事なのは本人のモチベーションと、本人が能力の低下を受け入れていること。そして職場と上司のサポートが求められます。まずは普通に接すること。
 

●重要なプライバシー保護
   職場復帰支援で大事なのはプライバシーの保護。情報の収集と労働者の同意、産業医による情報の集約・整理、情報漏えい等の防止などが求められます。これが守られなければ、主治医との良好な関係も構築できません。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1014-1.html