広報誌「かけはし」
 
■2005年6月 No.405
時評

医療費適正化は生活習慣病対策から


 経済財政諮問会議では、社会保障制度の一体的な改革について、民間議員から社会保障給付費の伸びのマクロ的管理指標として「高齢化修正GDP」という概念が示された。社会保障給付費といえども、長期にわたって名目GDPの伸びを超えて負担が伸び続けることは不可能である。ただ、急速に高齢化が進む段階では、ある程度、高齢化要因を勘案し、急速な伸びが止まれば名目GDPと等しくなる指標とした。医療・介護に関しては「集中改革5カ年計画」を策定し、PDCAサイクルで管理する提案である。
 厚労相は、社会保障給付費の伸びをマクロ経済指標で管理することが、社会保障給付費になじむかどうか疑問を呈した。総医療費は他の先進国と比較して対GDP比は必ずしも高くない。必要な診療を保障する保険の基本的な機能の維持が必要である。医療費適正化計画を都道府県ごとに策定し、具体的な取り組みにより2025年までに医療費を7.7兆円適正化すると反論した。しかし、大きな流れとして抑制は当然であり、修正GDPとの接点があればよいとした。
 首相も何らかの管理指標が必要であると検討を指示し、厚労省では医療給付費の伸び率を管理する新たな指針を設ける方針を固めたようである。
 ミクロの具体的なニーズで積み上げていくプロセス重視と、絶対額をマクロな指標で抑制しようという意見のぶつかり合いであり、政治の場を含めて議論は続くであろう。
 厚労省の示した、7.7兆円の中身は、生活習慣病対策の推進2.8兆円、平均在院日数の短縮等4.9兆円である。その実効性の成否はともかく、われわれ保険者に課せられた役割は重大である。
 平成12年に国民的な健康づくり運動として「健康日本21」がスタートし、15年に「健康増進法」、16年に「保健事業の実施等に関する指針」、さらに本年4月からは「健康フロンティア戦略」もスタートした。健康増進は国民の責務であり、保険者等は健康増進事業実施者としてその背中を押す役割を担っているが、肝心の国民の認識はどうだろうか。関心度や、健康増進への取り組みは、まだまだ低いように思われる。昨年発表された各指標の中間報告では、適正体重や歩数等の値が策定時より悪化していた。
 厚労省が策定した、「医療費適正化のための取り組みとそのマクロ的効果の試算」では、生活習慣病対策の具体策のうち、医療保険者による取り組みの積極的推進として、@地域保健と一体的に保健事業に取り組むA健診後のフォローアップについて中心となって取り組むB保険者協議会を設置し、医療保険者同士の連携、地域と職域の連携を強化し、一貫した健康管理や保健事業を推進する、となっている。確かに一健保では被扶養者を含めた保健事業の推進には自ずと限界がある。連携・共同事業には積極的に参画しなければならないだろう。ただ、都道府県別を事業推進の柱としているが、全国展開の健保組合でなくとも被保険者等は多くの都道府県に分布しており、これらに対してどのように連携した保健事業を提供できるのか、健保連を中心としたミクロな取り組みも大切である。

 

(I・W)