広報誌「かけはし」
  
■2005年1月 No.400

アレルギー疾患との付き合い方
   
 平成16年12月16日、薬業年金会館で健康教室が開催されました。健保連大阪中央病院耳鼻咽喉科の小林伸枝氏による「アレルギー疾患との付き合い方」のあと、大阪大学大学院医学系研究科教授の荻野敏氏による「花粉症の治療と効果」と題した講演が、それぞれ行われました。

●まず病態を理解する

小林伸枝氏

 アレルギーとは生体が異物(抗原)に対して病的な反応を起こす抗原抗体反応で、遺伝的素因で起こるアトピー性疾患と非アトピー性疾患があります。
 アレルギー疾患との付き合い方で重要なのは病態を理解すること。特にアレルゲン(抗原となる物質)を知ることが大切です。そしてアレルゲンや、症状を増悪させる因子を避けること。アレルギー疾患では自己管理が非常に大事です。
 アレルゲンにはホコリやダニ、昆虫、食物など様々なものがあります。急激に強いアレルギー症状を示す、アナフィラキシー反応を起こすと皮膚や消化器、呼吸器、循環器などに症状が出て、重篤な場合は死に至ります。

  
●内服薬から手術まで
   アレルギー性鼻炎は鼻の粘膜で起こるT型アレルギーで、発作的なくしゃみ、水のような鼻水、鼻づまりの3主徴があります。アトピー性の素因を持っている人に多く見られ、そのうち、花粉がアレルゲンになるものが花粉症です。目や鼻の症状以外にのどや気道、胃腸障害、皮膚症状、重篤な場合はぜんそくなどを起こすことがあります。
 アレルギー性鼻炎は発症の時期や起こり方、きっかけをはじめ、生活の状況などを総合して診断します。血液検査による診断が一般的で、さらに皮膚や鼻で誘発テストをして検査の精度を高めます。
 一般的な治療には内服薬を使います。アレルギーの反応自体を治療したい場合は減感作療法を行います。外科的治療として、鼻腔形態改善手術、苦痛がなく外来で行える粘膜焼灼術があります。
 そのほかアレルギーには食物アレルギーやラテックス(天然ゴム)アレルギー、化学物質過敏症などもあります。ラテックスアレルギーやハンノキの花粉症は、果物(リンゴ、メロン、キウイなど)に対するアレルギーとの関連があります。ラテックスアレルギーは、アナフィラキシーをきたすことがあり、果物のアレルギーが疑われるとき、注意が必要です。いずれも抗原をできるだけ避けることが大切です。
 


 

スギ花粉症の治療と患者満足度

荻野敏氏

 アレルギー性鼻炎によって起こるくしゃみ・鼻水と、鼻づまりが起こるメカニズムは異なります。したがって、くしゃみで悩む人と、鼻づまりで困っている人に同じ薬を使っても効果がないことがあります。薬や、治療はあくまでも患者さんの症状を聞いて処方することが大切です。そしてそのベースにあるのは抗原の除去と回避。人によっては減感作療法を使ったり、手術療法を行ったりします。もっとも大事なのは抗原を浴びないこと。それに加えて薬物療法を行えば、スギ花粉が多いといわれる17年も乗り切れるでしょう。