広報誌「かけはし」

■2005年1月 No.400
時評


 
自己免疫力を高めるために
〜笑いの効用〜
 
昇 幹夫氏


 「自己免疫力を高めるために〜笑いの効用〜」をテーマに、11月30日、日本笑い学会副会長で産婦人科医の昇幹夫氏による保健師連絡協議会研修会が、大阪中央病院で開かれました。

笑いがNK細胞を活性化

 昨年、吉本興業が筑波大学と一緒に、糖尿病患者に漫才を聞かせる実験を行いました。その結果、たくさん笑った人ほど血糖値が低くなるという結果が出ました。このように気持ちが変わると、体の仕組みが変わることがわかっています。
 人間にとって大切なのはいまだけです。だからいまを精一杯生きることが大事です。それを教えてもらったのががん患者とのモンブラン登山。84歳のおばあさんは家に閉じこもったままでしたが、登山に参加し、あちこちに出かけるようになって人生が変わりました。病気は自分や生活を治せというメッセージであり、マイナスではありません。受け止め方の問題です。
 NK細胞と呼ばれるリンパ球は、天然の殺し屋で、がんのもとになったりする異常な細胞を処理してくれます。笑うとNK細胞が活性化することがわかっています。
 

フードは風土

 日本でがんが増加したのは、長生きするようになったから。そしてがんはあなたの無理がたたったために起こる病気です。がんを抑制する免疫の働きは心と非常に関係があります。NK細胞を活性化すれば元気で長生きができ、がんにもなりにくくなります。活性化する方法のひとつが楽しく笑うこと。ほかには泣く、人に話を聞いてもらう、みんなで一緒に歌う、お化(華)粧をするなどもNK細胞が元気になります。その健康法が自分にとって心地いいと思えると、脳内モルヒネ、エンドルフィンが分泌され、NK細胞が活性化されます。
 もうひとつ大切なのは食べることです。食という字は人をよくすると書きます。子どもの味覚は10歳までに決まります。味覚を決めるのはお母さんの責任です。
 フードは風土。その土地で取れた旬のものを食べることが大切です。日本は穀類と豆が基本です。日本人の体は低カロリー低脂肪で生きられるような遺伝子を持っています。しかし、子どものころからハンバーガーなどの高カロリー高脂肪食を食べていると、簡単に糖尿病になります。

非まじめのすすめ

 そして心。人間気持ちが変わると体が変わります。がん患者の中には必ず治ると宣言して、余命3カ月からがんが縮小、健康体に生還した人もいます。人間のイメージは自律神経に働いて、免疫力がアップします。ですから、楽しいイメージを作ること。笑うことは治癒力を高める薬です。大切なのは、正しい生き方をやめて、楽しい生き方にすること。そして許す、忘れる。他人と過去は変えられませんが、自分は変えられます。すべては自己選択、自己決定。その上に自己責任があります。非まじめという発想で、いい加減に生きること。楽しいことをしましょう。