広報誌「かけはし」
 
■2005年1月 No.400
大阪連合会会長  加藤 幹雄
 
 昨年を振り返りますと、世界では、テロと戦争の年であり、国内では災害の年でありました。年の終わりにはアジアの国々に大きな津波が襲いかかりました。
 とくに中越地震は大きな被害をもたらしました。この寒空の下で、今もたくさんの罹災者が仮設住宅で暮らしておられます。罹災者の皆さんが一日も早く、自分の家で安心して過ごせるように心からお祈り申し上げます。
 明るいニュースもありました。
 景気は今は踊り場とも言われますが、経済はプラス成長の年でした。
 なにより私たちに勇気と感動を与えてくれたのは日本人アスリートたちの活躍でした。
 私にとって一番印象に残るのはイチローが最多安打の記録を達成したことです。84年ぶりに記録を破られたシスラーの遺族が球場で、イチローに祝福を送っているシーンがテレビに出ましたが感激でしたね。アメリカから昨年発信されたかず少ないグッドニュースの一つだったのではないでしょうか。イチローが関西を本拠に活躍した選手だったことも嬉しい限りです。
 昨年は私ども社会保障の仕事に携わる者にとっても、重要な一年でした。
 昨年10月には年金改革法が成立しました。国会議員の未納問題で、十分な議論ができなかった面はありますが、意義深いことだったと私は思います。
 第一に社会保障について、給付は減る、負担は増えることを明確に国民に示したことです。
 第二には国民年金の未納問題が明るみに出され、社会保険庁を始めとして年金を運営するインフラが機能不全に近い状態になっていることが明らかになったことであります。
 第三には今回の改正で年金基金関係者が要望してきたほとんど全ての事項が改められました。これにより年金基金制度の将来展望がより分かりやすくなり、基金を安定的に運営できる可能性が出てまいりました。
 年金の次に議論された介護保険に関しても、ほぼ議論は峠を越えたと思います。
 この議論でも、施設入所者から食費・居住費を徴収することがコンセンサスになりつつあり、健保連が反対している対象者拡大も見送られる方向であります。不十分ながら改善の方向に向かっております。
 一つ極めて遺憾だったことは日本歯科医師会政治連盟にからむ汚職事件であります。健保連の幹部がこの事件に連座していたことは痛恨のきわみでありました。
 昨年はさる年でした。今年は、禍を取り去る(トリ・サル)とともに、これを元気な鶏の鳴き声によって、福を取り(トリ)戻す年にしたいものです。
 今年の最大の課題は医療制度の改革であります。
 ご承知のように、健保の財政状況は、総報酬制や、本人3割負担の導入により小康状態にありますが、依然拠出金の負担は保険料収入の40%を超えており、早晩再度危機的状況に陥ると思われます。
 昨年の健保組合全国大会では、拠出金の廃止と医療制度改革の早期実現を世論に強く訴えました。
 医療制度改革に対する健保の取り組みの上で重要な点が3点あると思います。
 第一は、医療制度改革への基本的スタンスをより明確に示すことです。両拠出金の廃止と言っても、これに代わる制度のもとで、応分の負担が求められることはさけられないことであります。要は合理的な透明度の高い制度になるかどうかであり、健保連としては、不十分であっても具体案を早く提示することが肝要だと思います。
 第二には、我々の考えをもっと積極的に国民に明らかにすることだと思います。昨年の全国大会の際の全国紙でのアピールは意義があったと思います。
 これは私の偏見かもしれませんが、健保はこれまで、外部への意思表示については少しシャイだったのではないでしょうか。たとえば、これは済んだことですが、混合診療に関しても、もっと積極的に議論に参画してもよかったのではないでしょうか。
 第三は諸勢力との連携を深めることです。とくに日本経団連と連合との連携が重要だと思います。
 日本経団連は経営者、連合は組合の代表ですが、健保はいずれにもニュートラルな立場であるとともに、なによりの強みは医療保険の現場を知っていることです。全体をリードする責任があると思います。
 これから一年の議論が制度の将来を大きく左右することでしょう。
 新年にあたり、皆様と力を合わせて、持続可能で納得が得られる制度づくりを目指して、最大限の努力を重ねる決意でございます。
 最後になりましたが、皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念いたしまして、私の新年のご挨拶とさせていただきます。