広報誌「かけはし」
  
■2004年8月 No.395

がん予防と食生活
   
 「がん予防と食生活」をテーマに、健保連大阪中央病院内科医師の石川秀樹氏による健康教室が7月14日、薬業年金会館で開催されました。
 
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●検診で早期発見を 治療しやすい大腸がん
 

石川秀樹氏

 生活を見直してがんを予防する一次予防はまだまだ研究途上ですが、検診に関してはかなり完成しています。早期発見で治癒しやすいがんの代表が大腸がん。症状が出る前に発見できれば、ほぼ完治するがんです。胃がん、子宮がんもそれについで完治しやすいので、検診で早期発見を心がけてください。乳がんはマンモグラフィーで撮影する検診をおすすめします。肺がんは非常に増加しており、男性では胃がんを抜いて一番多いがんになりましたが、早期発見できてもなかなか完治が困難です。これは禁煙による発がんの予防が一番の対策です。

  
●運動で大腸がん予防 乳酸菌にも期待
  
   食事による大腸がんの予防は一番研究の進んでいる分野です。大腸がんを促進する食品は赤身肉、アルコール。タバコも大腸がんを誘発する可能性があります。運動は確実に大腸がんを予防すると考えられています。一方、野菜は日本人が通常摂取している量があれば十分で、それ以上食べても大腸がんの予防効果はないようです。それに対して日本人に圧倒的に足りないのは運動です。
 食物繊維に関しては大腸がんを予防すると考えられてきましたが、最近の欧米の研究では効果がないという研究結果が多数出ています。私たちも400人を対象に食事指導を行ったうえで、食物繊維やラクトバチルスカゼイシロタ株という乳酸菌を4年間投与して前がん病変である大腸腺腫の発生を観察する研究を行いました。
 その結果、やはり食物繊維を投与した集団の方が大腸腺腫が発生しやすいという結果が出ました。特に有意差が出たのが、食物繊維をとった方が大きな大腸腺腫が発生する現象でした。一方、乳酸菌を投与した集団では悪性度の強い大腸腺腫が3分の2に減少することがわかりました。このことから、乳酸菌の摂取によって大腸がんがある程度予防できるのではないかと考えられます。
 現在、私たちは緑茶の抽出物の効果について研究中です。家族性大腸腺腫症という、大腸がんにかかりやすい遺伝性疾患の人にこれを投与し、大腸腺腫が減少するかどうかを見ています。
 現在、厚生労働省ではがん克服のプロジェクトが進められていますが、これからの10年で目指すのはオーダーメイド予防。遺伝子の調査によって、がんになる可能性の高い人を調べ、食事や生活、投薬などを個別に指導していこうというものです。これからは一人ひとり全員がオーダーメイドでそれぞれにあった検診やドック、医療を受ける方向になると思われます。私も大腸がんの分野でこのプロジェクトに携わっています。今後、時間をかけて正確な研究を続けていきたいと考えています。