広報誌「かけはし」

■2004年8月 No.395
時評

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生活習慣病予防のための食生活

 

幕内秀夫氏


 「生活習慣病予防のための食生活」をテーマに保健師連絡協議会研修会が7月20日、大阪中央病院で開催されました。講師は管理栄養士でフーズ&ヘルス研究所主宰の幕内秀夫氏。


ご飯食減少の50年  影響大きい食の変化
 いま、食生活に関する情報が混乱しています。まず考えてほしいのはこの50年間の食生活。日本列島で食べ過ぎて病気になる人が現れた時代は初めてです。現在の食事の常識は昭和30年代に栄養改善普及運動として提唱されるようになり、ご飯よりもおかず、タンパク質を重視しました。現在の若い女性がご飯をあまり食べないのはその延長線上にあります。
 この50年間の最大の変化は欧米化。ご飯を食べなくなり、その代わりに輸入小麦粉と砂糖、油脂が増加しています。その結果、豊かな食事に無縁で育った80〜90代の高齢者が元気で、50〜60代の男性にはがんが急増、40〜50代から糖尿病が始まり、女性の乳がんが30代から始まっています。さらに子どもたちにはアトピーが増加しています。とりわけ影響を受けているのが乳がん患者の増加。乳がんの患者の朝食はほとんどパン食が中心。ご飯を食べない人が多いのが特徴的です。人口に対する乳がん患者比の高さと、ご飯を食べない都道府県の分布はほぼ一致します。
 食生活の基本は母乳です。母乳には人体に必要なものが100%すべて含まれています。離乳食になると重湯から始まり、お粥、ご飯となっておかずを食べるようになります。人間は水にでんぷんを増やしながら成長する動物なのです。
 
見るより食べて指導 健康メニュー加えて

 食事指導で難しいのは人間は体だけで食べるのではなく、心でも食べるという点。酒、タバコ、お菓子はストレス解消、心の満足を目的にしている場合が多いのです。体に悪いのはわかっていても、なかなかやめられるものではありません。上手につきあうことが大切です。
 食事指導でもうひとつ難しいのが食事時間。夕食時間が遅くなっています。その分、お菓子や缶コーヒーなどで夕方カロリー補給をする人がいますが、ここで、おにぎりなどでんぷんをとり、夕食は軽くするよう指導しましょう。
 大事なのは@ご飯をきちんと食べる、A液体でカロリーを摂らない、B発酵食品を常に食べる、Cパンの常食はやめる、ということ。さらになるべく未精製の米を中心に、季節がわかる野菜と動物性食品は魚介類をとるということが大切です。
 食生活改善のためのもっとも効果的な伝え方は社員食堂の献立を変えること。見るよりも食べて覚えてもらいましょう。五分付き米や無添加の味噌・漬け物などを使った健康メニューを加えると、自然にみんな健康メニューを選ぶようになります。これがもっともスムーズで低コストな指導法です。