広報誌「かけはし」
 
■2004年5月 No.392
時評

介護保険制度見直しに向け、
迅速に確固たる方針決定を


 今国会における年金制度改革は、最大の正念場を迎えている。しかし、年金改革の次に控えている介護保険制度の見直しもこれにおとらず重要である。厚生労働省では「介護制度改革本部」を発足させ、今年の秋頃には改革案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針である。
 介護保険制度は平成12年4月にスタートし、高齢者や家族の介護に対するニーズに応え、着実に定着してきている。しかし、介護保険費用は高齢化のスピードを上回って伸びている。制度発足時には218万人であった要介護認定者は、昨年8月末で67%増の365万人に、介護サービスの利用者数は149万人から281万人になった。これに伴い、費用は12年度の3・6兆円から16年度予算ベースで1・7倍の6・1兆円に急増し、このままでは将来的には負担に耐えられなくなってしまう。
 介護保険制度改革の議論は社会保障審議会・介護保険部会を中心に行われており、6月頃に基本方針の取りまとめを目指している。制度改革に当たっては、戦後のベビーブーム世代が高齢期を迎える2015年、さらに我が国の高齢化のピークとなる2025年、という将来を見据えた「制度の持続可能性」を考えることが重要である。また、介護制度当初からの検討課題や施行後の検証で見えてきた様々な課題を視野に入れ、「制度の基本理念の徹底と新たな課題への対応を図る」ことも必要であるとしている。
 この度の制度見直しの主なテーマは@給付と負担のあり方、A保険者のあり方、B制度運営のあり方などで、その具体的課題は多岐にわたっている。そのなかでも、第2号被保険者の範囲拡大問題(現在の40歳以上を20歳以上にする)や障害者支援費制度との統合問題などが焦点となる。特に、我々健保組合にとっては、介護給付費納付金の設定にはほとんど関与できない仕組みを改善すべきである。また、今後もさらに負担増が予想される保険料についても、上限をぜひとも設定すべきである。
 他にも、税(公費)関係で、財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)でも介護、年金や医療などの社会保障制度を一体的に見直す必要があるとの認識で協議が進められている。
 このようななか、健保連本部では、介護保険の見直しの議論は、その次の医療保険制度改革の議論と密接に関係しているとの認識に立ち、介護保険制度検討ワーキンググループ(WG)を新設し、検討するとのことである。今後のスケジュールは5月、6月に集中審議を行い、その検討結果を医療制度等対策委員会で審議し、7月の常任理事会および理事会に報告される。我々個々の健保組合は厳しい目でその方針決定の進捗を見守ることが必要である。
 このWGで十分議論された提案を基に、確固たる方針を迅速に決定してもらいたい。そして、その揺るぎない方針を基に、介護保険部会などの場においてしっかりとそれを主張して欲しい。それが、次に続く医療制度の抜本改革へと繋がっていくと確信する。
  (M)