広報誌「かけはし」
 
2004年4月 No.391
最新肥満事情
〜食べてないのになぜ太る?〜

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 「最新肥満事情〜食べてないのになぜ太る?〜」と題し、健康運動指導士の園田幸子氏による健康づくり教室が3月8日、薬業年金会館で開かれました。当日は講演のほか、座ってできるストレッチ体操の指導も行われました。
園田幸子氏
●摂取カロリーは減少 運動不足で肥満増加
   糖尿病や高脂血症、高血圧、高尿酸血症は動脈硬化の要因ですが、これに肥満、特に内臓脂肪蓄積型肥満が加わると、動脈硬化が加速します。内臓脂肪型肥満とは、内臓脂肪の面積が100平方p以上ある状態。高脂血症や高血圧、糖尿病といった病気は、初期の間は自覚症状がほとんどありません。また、肥満は生活習慣病のリスクを高めるだけではなく、寿命も縮めているという調査結果が出ています。
 現在日本人の死因の第1位は悪性新生物、2位心疾患、3位脳血管障害ですが、将来は運動不足が直接または間接の原因となる疾患が死因のトップになるといわれています。
 日本人の場合、男性は年々肥満の傾向にあり、女性は若い世代でやせの傾向にあります。実は日本人の摂取カロリーは1975年から2000年の25年で12パーセントも減少しています。にもかかわらず、肥満傾向にあるのは運動習慣のある人が少ないということです。一方、100歳以上の長寿の人では、運動習慣のある人が男性で半数、女性も4割以上ありました。
 肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症は冠動脈疾患の危険因子ですが、それぞれは軽症でも、複合すれば大幅に危険度が増加します。そこで、肥満解消の手段として運動が必要になってきます。
 
●糖代謝や自律神経に作用 運動には抗うつ効果も
   運動は、運動代謝の促進、筋肉増加による基礎代謝の促進のほか、自律神経の安定、脂肪燃焼・分解促進効果、内臓脂肪の減少、生理活性物質アディポサイトカインの改善、糖代謝の活性化という効果をもたらします。
 運動は、自律神経の活動を促進させます。肥満の人はこの自律神経活動が低下しており、熱の代謝が悪いことがわかっています。長期的に有酸素運動を続けることによってこれが改善されます。
 一方、インスリンの働きが悪くなると、糖代謝が悪化、血中の糖やインスリンが血管壁を傷めます。運動することで、筋収縮が起こって糖が消費され、糖輸送が活性化し、インスリンに頼らない糖代謝が促進されます。さらに運動はインスリンの感受性も高め、糖を取り込むGLUT4という物質を増やして、糖代謝を促進します。このように運動は様々な効果で肥満や病気を予防するとともに、精神面にも作用し、緊張や怒りなどを抑えて、活気を与えます。さらに、抗うつ効果も認められています。
 肥満は病気をもたらし、日常生活のQOL(Quality of Life=生活の質)を下げるだけではなく、企業の損失にもつながります。みなさんが積極的にかかわって、社内の意識を変えていっていただきたいと思います。