広報誌「かけはし」
 
■2004年4月 No.391

   3月23日(火)、健保連大阪中央病院で、平成15年度第2回保健師連絡協議会総会が開催され、16年度事業計画と予算案について承認されました。総会後には(財)労働科学研究所主任研究員で労働ストレス研究グループ長の佐々木司氏による特別講演会「心と体の慢性疲労とその予防・対策」が行われました。

 総会は、沖中奈美子会長の開会のあいさつで開始。来賓の三洋電機連合健康保険組合の林勝彦専務理事は、企業の業績と依然厳しい雇用情勢などに触れ、メンタルヘルスの必要性に言及。「みなさんにはメンタルヘルスを含め、働く人の応援、支援をしていただきたい」と期待を語りました。
 議事は第1号議案として「平成16年度事業計画(案)」が提案され、第2号議案で健保連大阪連合会吉田事務局長から「平成16年度予算(案)」が提示されました。いずれの議案も賛成多数で可決。総会後、大阪連合会の置田専務理事から「健保組合をめぐる情勢報告」(別掲)がありました。


沖中奈美子会長

 

特別講演会 
「心と体の慢性疲労とその予防・対策」
 
 

(財)労働科学研究所主任研究員 労働ストレス研究グループ長
佐々木司氏
 

 

 今回の講演では、みなさんからご要望のあったいくつかの話題に沿って話を進めていきます。

   慢性疲労の概念や定義について
   疲労は急性疲労と慢性疲労に大別できます。作業中、小休止によって回復する疲労を急性疲労、睡眠などによって回復するものを日周性疲労と呼びます。慢性疲労はそれをこえたもので、最近は3連休でも回復せず、疲労が亢進されるものを慢性疲労の定義としています。

佐々木司氏

   慢性疲労時の心身の状況について
   疲労の2大特性は、進展性と、可逆性。疲労は時制として過去を扱うもので、休息欲求があり、連続的です。一方、ストレスは未来に対する感じ方で、興奮の方向に向かい、時間の経過とは無関係に離散的に発生します。他人のストレスや疲労を共感できるという共通点もあります。疲労全体から見ればストレスは疲労のなかに含まれます。ストレス対策も、疲労対策として捉えるべきです。
 一般的な慢性疲労時の状態について@意識的な努力による業務遂行、A睡眠不足の自覚、B生活での活動性の低下、C疲労感の持続、眠気、局所身体違和感、D感情的不健康徴候の発現が仮説としてあげられます。Dが見られた場合は、慢性疲労がかなり進行しているといえます。
 
   慢性疲労症候群との違い
   慢性疲労は病気ではなく、疲労なので可逆性があり、休息によって回復します。しかし、慢性疲労症候群は病気です。その判断基準には大基準と小基準があります。具体的には生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6カ月以上の期間持続ないし再発を繰り返したり、継続する微熱や悪寒、リンパ節の腫れといった症状のいくつかが当てはまれば慢性疲労症候群と判断されます。
 
   疲労回復のための熟睡、快眠方法
   熟睡のためには睡眠のメカニズムを知ることが必要です。一日には眠れる時刻帯と、眠れない時刻帯があります。これは概日リズムに沿ったもので、夜19時ごろは眠れない時刻帯です。一方起きている時間に比例し、眠気が増えるというメカニズムもあります。
 さらに、うまく眠るためには睡眠前、1時間程度の助走時間が必要です。翌朝早く起きなければならないなど、ストレス状態で眠る「注意睡眠」は睡眠の質を落とします。
 
   休養や軽い運動以外の身近な対策方法
    疲労対策は「@疲労回復の促進」「A疲労進展の抑制」「B疲労発現の予防」の3つがあります。特にAの進展の抑制に焦点を合わせるのがよいでしょう。  その対策として概日リズムを利用します。疲れた日は起き抜けに光を浴びると眠気が解消します。それで夜に十分な睡眠を取れば、疲労対策になります。また内発的動機付け理論を利用し、疲労をプラスの方向に評価することが、慢性疲労対策にもなると考えられます。
 

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情勢報告
 
 

健保連大阪連合会 置田榮克専務理事

   健康保険組合をめぐる情勢
   現在開催中の国会では年金問題が大きく取り上げられています。年金法の改正が円滑に進むかどうかは今後の介護保険や医療保険の改革にも影響を及ぼすと考えられます。一方、社会保障審議会の医療保険部会では昨年3月28日に閣議決定された新しい高齢者医療制度について議論を重ねている最中です。
 次に、本年4月からの診療報酬改定は一昨年の改正法附則のなかで「診療報酬の体系の見直し」が決められている。「医療技術の適正な評価」「医療機関のコスト等の適切な反映」「患者視点の重視の面からの評価」という3つのタイトルで、中央社会保険医療協議会で支払側・診療側から意見が出され議論されました。改定で重点的に評価したものは小児や乳幼児の診療について、夜間、休日を含めた小児科の救急医療の点数を大幅に見直しています。加えて、急性期入院医療の包括払いに関しては、すでに高度先進医療を扱う大学病院と国立がんセンター、循環器病センターを合わせた82病院が実施、急性期医療の定額化や包括化が進んでいます。今後は慢性期についても一定の定額化が進むのではないかと考えられます。