広報誌「かけはし」
  
■2004年3月 No.390

運動療法  〜在宅介護について〜
   
 「運動療法〜在宅介護について〜」をテーマに、健保連大阪中央病院理学療法士の川田光博氏による健康教室が2月12日、薬業年金会館で開かれました。
 
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●機能の維持回復と日常生活の自立へ
 

川田光博氏

 リハビリテーションは患者さんを中心に様々な職種の人がかかわって行われます。それらの職種をコーディネートし、適切な治療を提供するのがリハビリテーション医です。理学療法士は運動療法と、ADL(日常生活活動)といった理学療法を中心に行います。そのほか、作業療法士、言語療法士、義肢装具士、看護師、保健師、教師、臨床心理士、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー、ホームヘルパー、ボランティアといった人がリハビリテーションにかかわります。
 私たち理学療法士が考える理学療法のプロセスは、機能障害を改善し、日常生活を自立させ、社会生活に復帰させようというもの。しかし、高齢者については病院に入院すると基本的に機能が衰退します。まずは、機能の維持に重点を置くことになります。ところが、十分な機能回復ができず、寝たきりになる人も多くいます。寝たきりから健康体に移行させる場合にはどうすればよいのでしょうか。
 寝たきりに近い状態では、患者本人と生活環境と介護者が非常に密接に結びついた状況になります。介護者の負担は大きくなり、疲労が重なって病気になったりします。そうなると、患者本人は褥創や関節の硬縮、筋力や心肺機能の低下など、廃用性の症候群を起こします。

  
●楽な介護でADL向上 寝たきりの防止を
  
   そこで介護の質を考えなければなりません。楽に介護できなければ、今後の高齢化社会では、寝たきりの高齢者をつくってしまいます。楽な介護ができれば、介護者も本人も楽にADLが可能になります。
 たとえば、仰臥位の患者を起こすとき、両手で水をすくうように頭を挟み込んで起こせば、動作に無駄がなく、軽い力で長座位を取らせることができます。あるいは、座位から立ち上がらせるとき、頸椎の突起を中指で手前に引くと体が前に傾きます。さらに、かかとを膝より中へ入れ、肩甲骨の下端を前に押して起こすと簡単に立たせることができます。こうして患者さんを簡単に起こせるようになれば、関節硬縮や褥創、寝たきりなどが起こりにくくなり、本人の自立とともに介護者の負担も減少します。患者の自立で重要なのが個人の体力。特に平衡感覚は70代になると、10〜20代の20%以下にまで低下します。それを維持するにはまず、歩くこと。週に3〜4日、約30分ほどを目安にしてください。運動に際して大切なのはウオーミングアップ。それにはラジオ体操が最適です。筋肉を伸ばすように体を動かすと、高齢者の体力向上、維持に効果的です。