広報誌「かけはし」
  
■2004年1月 No.388

煙草で壊れていく
   
 「煙草で壊れていく〜怖い肺気腫の話〜」をテーマに、健保連大阪中央病院内科医長の森雅秀氏による健康教室が、平成15年12月10日、薬業年金会館で開かれました。
 
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●喫煙は万病の元 肺が壊れる肺気腫
 

森 雅秀氏

 煙草に起因する病気の多くは60〜70代で症状が出ますが、実際は40〜50代での予防、つまり禁煙が大切です。そこで重要になるのが、健康保険組合の健康指導。煙草の3大有害物質のうちニコチンと一酸化炭素は動脈硬化、タールは発がんに特に関連があるといわれています。喫煙者で問題になるのが若年女性、未成年、受動喫煙者。成長期の未成年時に煙草の有害物質にさらされると、細胞の遺伝子が傷つき発がんの危険性が増加します。煙草は肺気腫や肺がん、動脈硬化などの原因になるほか、ほとんどのがん、歯槽膿漏などの発症率も上昇させます。男性喫煙者の約3分の1は煙草が原因で死亡しています。
 肺気腫は簡単にいうと、煙草によって肺胞が破壊されていく病気。酸素交換が困難になり、呼吸に支障が出ます。これと慢性気管支炎を含めた非可逆的な気流閉塞のことをCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼びます。日本には約530万人のCOPD患者がいます。圧倒的に男性の罹患率が高く、年々増加傾向にあります。典型的な症状は労作時の呼吸困難、慢性の咳、喀痰、喘鳴など。身体所見、画像診断のほか、肺機能検査で診断します。重症になるまで胸部レントゲンでは変化が出ません。診断の重要な点は、肺機能検査のなかでも一気に息を吐き出せるかどうかの目安になる「1秒率」で、気道の閉塞の指標となります。
 中等症以上の方には薬物療法、あるいは重症化した場合には在宅酸素療法や時に手術も行われます。しかし、最も患者の多い軽症の方も含めてなによりも禁煙が重要です。壊れた肺は元に戻りませんが、禁煙は将来の症状の悪化を予防し、医療費も削減できます。

  
●肺気腫も肺がんも 予防はまず禁煙
  
   肺がんの危険率の指標にブリンクマンインデックス(1日の喫煙本数×喫煙年数)があります。これが600を超えると発がん頻度が極端に上がります。喫煙者の2割は肺がんになり、その8割は治癒しません。また、喫煙は動脈硬化、心筋梗塞など生活習慣病のリスクファクターです。コレステロールや血圧のコントロールと同じぐらい、禁煙は重要です。
 禁煙が難しいのは、身体的依存、つまりニコチン中毒と精神的依存が複雑に絡み合っているため。禁煙のポイントは、その必要性を喫煙者に理解してもらうこと。禁煙によって息切れや咳が改善し、心筋梗塞やがんのリスクが減ります。そして、ニコチン置換療法といって、比較的容易に禁煙する方法があることを認識しましょう。ニコチンパッチやニコチンガムを使った禁煙は、禁断症状がある人に特に有効です。ある程度禁煙に自信がつけば、積極的に他人に知らせ、周囲の目をプレッシャーにするのも効果的です。失敗すればまたがんばればいいのです。