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森 雅秀氏 |
煙草に起因する病気の多くは60〜70代で症状が出ますが、実際は40〜50代での予防、つまり禁煙が大切です。そこで重要になるのが、健康保険組合の健康指導。煙草の3大有害物質のうちニコチンと一酸化炭素は動脈硬化、タールは発がんに特に関連があるといわれています。喫煙者で問題になるのが若年女性、未成年、受動喫煙者。成長期の未成年時に煙草の有害物質にさらされると、細胞の遺伝子が傷つき発がんの危険性が増加します。煙草は肺気腫や肺がん、動脈硬化などの原因になるほか、ほとんどのがん、歯槽膿漏などの発症率も上昇させます。男性喫煙者の約3分の1は煙草が原因で死亡しています。
肺気腫は簡単にいうと、煙草によって肺胞が破壊されていく病気。酸素交換が困難になり、呼吸に支障が出ます。これと慢性気管支炎を含めた非可逆的な気流閉塞のことをCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼びます。日本には約530万人のCOPD患者がいます。圧倒的に男性の罹患率が高く、年々増加傾向にあります。典型的な症状は労作時の呼吸困難、慢性の咳、喀痰、喘鳴など。身体所見、画像診断のほか、肺機能検査で診断します。重症になるまで胸部レントゲンでは変化が出ません。診断の重要な点は、肺機能検査のなかでも一気に息を吐き出せるかどうかの目安になる「1秒率」で、気道の閉塞の指標となります。
中等症以上の方には薬物療法、あるいは重症化した場合には在宅酸素療法や時に手術も行われます。しかし、最も患者の多い軽症の方も含めてなによりも禁煙が重要です。壊れた肺は元に戻りませんが、禁煙は将来の症状の悪化を予防し、医療費も削減できます。
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