■2004年1月 No.388
支払基金の延滞金制度導入に思う
“委託金の使途との関連は”
年金制度改革に向けての厚労省案が昨年の11月17日に示された。
その内容を受けて、今後各界の思惑も大いに交錯し、法案成立までまだまだ紆余曲折があることだろう。
一方、医療保険制度改革については、年金改革の余波を受けて当分の間検討に入らないという状況下にあると報じられているが、健保組合を取り巻く情勢は非常に厳しく一日も早い審議入りを期待したい。
このような状況のなか、現時点での関心事は支払基金の民間法人化である。民間法人化を契機として、支払側の期待に応え、業務の質の向上など支払基金が担う懸案事項は重要であり、組合の事業運営にも多大の影響を及ぼす。
そのうちの一つに、診療報酬等の未納に対する延滞金制度の導入がある。
未納はこれまでにも発生していたが延滞金については議論の範疇にもなかった。ところが今回政令により委託金水準の引き下げが実現し、これに伴って延滞金制度が導入されるということであるが、委託事務内容については従前と全く変わりがないのに、何故いまさらという思いが強く、納得できるものではない。
これまでの取り扱いでは、未納診療報酬の対応は、各保険者からの委託金で賄ってきたと公開された。さすれば、民間法人化となった今日でも、委託金の水準が若干見直されたとはいえ、依然として存続している訳であるから、委託金の充当で対処できるのではないか。したがって委託金の引き下げで延滞金を徴収する大義名分はない。
そもそも委託金については、健保連と支払基金との契約によって決定しているが、その使途についての根拠規定はどこにもない。
因みに、平成14年度の通常月の委託金の使途状況では診療報酬未収充当に0・24ヵ月分、医療機関への先払充当金として0・20ヵ月となっており、この数値から見ても委託金の範囲で十分滞納額に対応できることになる。
一部には、未納組合の支払いのために委託金を流用すべきではないとの意見もあるが、保険者間の相互扶助の精神に基づくものと説得すれば理解を得ることができるだろう。
診療報酬未納となっている組合にあっては、既に別途積立金は勿論、準備金も枯渇し、支払いをしたくてもできない、保険料率問題も含め極限の状態であるなかで、追い討ちをかけるような延滞金の徴収はさらに財政を圧迫し解散も余儀なくされることにもなる。
いずれにしても、財政圧迫の根源は拠出金制度にあり、この問題が解決すれば診療報酬等の滞納も起こりえないと考えられるので、是非とも一日も早い制度改革の実現を望むものである。
(隆)