広報誌「かけはし」
  
■2003年11月 No.386

大腸がん 〜早期発見の手段〜
   
「大腸がん〜早期発見の手段〜」をテーマに、健保連大阪中央病院内科医師の石川秀樹氏による健康教室が、10月17日、薬業年金会館で開かれました。
 
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●増加する大腸がん 食生活で一次予防を
 

石川秀樹 氏

 近年大腸がんが増加しており、2015年には、発生率が一番高くなるといわれています。予防策としては、早期発見、早期治療を行う二次予防と、がんの罹患を予防する一次予防の二つがあります。大腸がん早期発見のために、厚生労働省は「免疫学的便潜血検査・2日法」をすすめています。検査が2日に及ぶのは大腸がんは断続的に出血するので、1日だけの検査では出血を検出できない場合があるからです。この検査で、一度でも陽性が出た場合は必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。内視鏡検査は注腸検査より細かい部分までチェックができ、がん化する可能性のあるポリープもその場で切除できることもあります。大腸ポリープが発見されたら、2〜3年に1度、定期的に受診しましょう。
 一方、一次予防では生活変容と化学予防の二つの方法があります。近年がんになりやすい遺伝子が判明しているので、薬を飲んでがんを予防する、化学予防が実現する時代がすぐそばまで来ています。生活変容の中の大切な柱は、禁煙。さらに肉は1日80グラムまで、野菜は1日350グラム、イモ類や精製しない穀類の摂取を心がけ、飲酒は下痢をしない程度にとどめます。加えて総摂取エネルギー中、脂肪由来は18〜22%程度にとどめ、適度な運動をする、BMIを25以下にするといったことも大腸がん予防には有効です。

  
●サプリメントに頼らず 運動と乳酸菌が効果的
  
   食物繊維が大腸がんを予防するのは当然のように考えられていますが、詳細な研究によると関連性は少ないという結果が出始めています。私が臨床試験を行った結果、食物繊維のサプリメントを摂取したグループの方が、そうでないグループよりポリープが大きくなりやすいのではないかと考えられる結果が出ました。一方、同時に試験を行った乳酸菌を投与したグループにはがんになりやすいポリープの発生が少ないという結果が得られました。
 家族性大腸腺腫症は大腸に数千個単位でポリープができる遺伝性疾患ですが、緑茶の抽出物がポリープの発生を抑制するかどうか、いま試験中です。ここで注目しているのは運動です。家族性大腸腺腫症の患者でも、体力のある人はポリープが小さいことがわかりました。
 アメリカでは「がん予防15カ条の勧告書」を作っています。ここでは食生活上の注意や体重の維持、運動の継続などを勧告しています。それによれば、適切な食事をしていればサプリメントは不要ということになっています。また、健康食品の中には問題を引き起こすものもあります。がん予防のためには、まず、生活を律することが重要です。