広報誌「かけはし」
 
■2003年11月 No.386

 
睡眠を考える
   
 「睡眠を考える〜なぜ『居眠り』をするのだろう?〜」と題し、大阪府こころの健康総合センター相談診療部参事の三上章良氏による心の健康講座が、10月28日、薬業年金会館で開かれました。
 
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●増える睡眠不足 重要な睡眠衛生
 

三上章良氏

 最近、日本人の眠りがおかしいといわれています。特に居眠りをする人が多く見られます。日本人は睡眠を削っても仕事をする方がいいという風潮がありますが、これは睡眠を軽視しています。また、子どもの睡眠不足も目立ちます。もっと睡眠について関心を持ち、スリープヘルスの向上につなげてほしいと考えています。
 よく、睡眠障害イコール不眠症ととらえる人がいますが、不眠はいろいろな原因で起きる症状であり、病名ではありません。睡眠障害は睡眠関連疾患といいかえるべきだと考えています。さらに睡眠関連疾患より重要なのは睡眠衛生(正しい睡眠習慣)です。
 不眠の原因には、不適切な睡眠習慣、悪い睡眠環境、内科疾患、精神疾患、概日リズムの乱れ、そして睡眠時無呼吸症候群等の特殊な疾患があります。眠られない人のうち、見過ごしてはいけないのが眠られていないことを自覚できていない人。眠りの質が悪いと昼間、集中力や記憶力の低下、抑うつ気分などの症状が出ますが、睡眠不足が原因だと認識できないのが問題です。
 睡眠は脳とこころのバイタルサインです。十分な睡眠をとることは心と体の大事な栄養であり、睡眠の質を上げることは生活の質を上げることです。睡眠と覚醒はリズムを形成し、夜と昼は表裏。よい睡眠が取れていなければ、覚醒が悪くなり居眠りの原因となります。睡眠覚醒リズムとそのほかの体のリズムの調和も必要です。リズムを知った上で自分の生活を調整することが大事です。
 睡眠は生涯の3分の1を占めるもので、脳の積極的な活動により能動的に出現します。心身の健康にとって不可欠で、寝だめのような貯金はできず、睡眠不足は負債となってたまっていきます。成長や成熟を促すホルモンは睡眠中に分泌されます。昼間の14時頃には生理的に眠気が来ますが、短時間の昼寝により覚醒度を上げることが重要です。

●眠気は不健康なサイン 睡眠の質の向上を
   昼間の眠気の原因となるのは、不適切な睡眠衛生による睡眠不足に加えて、精神生理性不眠症やレストレスレッグズ症候群など不眠を呈する疾患、ナルコレプシーなど過眠を呈する疾患、概日リズム睡眠障害、レム睡眠行動異常症のような睡眠時随伴症など多様です。
 特に、睡眠時無呼吸症候群は山陽新幹線居眠り運転等で注目されるようになり、検診も行われるようになりました。しかし、病気を調べることも大事ですが安全管理の対象は昼間の眠気であるべきです。眠気や居眠りを不健康なサインとして自覚することが重要です。自覚できればその原因を探るべきです。睡眠に関心を持ち、睡眠の質を向上させ、生活の質を上げることが必要です。