広報誌「かけはし」
  
■2003年9月 No.384

老眼 白内障と緑内障
   
 「老眼 白内障と緑内障〜見過ごすと危ない40代からの目の病気〜」をテーマに、健保連大阪中央病院・眼科部長の太田玄一郎氏による健康教室が8月19日、薬業年金会館で開催されました。
 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

●増加する緑内障正常眼圧でも発症
 

太田玄一郎 氏

 老眼は年をとって近くのものが見えにくくなる状態で、病気というよりも機能的な低下です。治療には、めがねや遠近両用コンタクトレンズを使用します。
 最近増加傾向にあるのが緑内障。眼圧が目の正常機能を維持できる生理的な範囲(健常眼圧)を越えて上昇することで生じる視神経障害で、視野の欠損や視力低下を来す疾患です。最近は正常眼圧の範囲でも視神経に障害を起こす正常眼圧緑内障が増えています。緑内障にはほかの病気から眼圧が上がる続発緑内障と、先天緑内障、ほかに障害の原因がなく眼圧があがる原発緑内障があります。原発緑内障には急に眼圧が上昇して症状が出る閉塞隅角緑内障と、じわじわ眼圧が上がり、徐々に症状が進む開放隅角緑内障があります。閉塞隅角緑内障で眼圧が急激に上がるので、急激な視力低下と眼痛、頭痛などの症状が出ます。
 緑内障は失明原因の10〜25%をしめる疾患です。有病率も6%程度と高くなっています。診断には眼圧、眼底、視野などの検査が行われます。眼圧の検査には接触法(圧平眼圧計)と非接触法があり圧平眼圧計の方が正確ですが、スクリーニングには最近はほとんど非接触法がとられています。眼底検査では視神経乳頭の状態を見ます。視野検査では見る範囲が欠けていないかどうか確認します。

  
●治療は視機能維持を手術か薬物療法で
  
   緑内障で一度障害された視神経は元に戻らないので、治療では現在の視機能を維持することが目的になります。治療は、眼圧を下げるようにします。眼圧を下げるには薬物、レーザー光線、手術の3つの方法があり、閉塞隅角緑内障ではレーザー光線か手術を選択します。開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)では薬物療法が中心になります。
 薬物療法は、点眼薬と全身投与の2種類がありますが、全身投与は緊急避難的なもので、主に点眼薬を使います。最近緑内障治療薬の第一選択になっているのが、房水流出を増加させるプロスタグランディン関連薬。他には、房水の産生を押さえるβブロッカーや炭酸脱水酵素阻害剤の点眼などがよく使われています。薬物で効果がない場合は房水流出改善のために、繊維柱体切除術といった手術を行います。
 もう一つ年齢とともに出てくる病気が白内障。これは、水晶体の不溶性のタンパク質の増加により、水晶体が白濁する疾患です。ある程度進行すると、手術以外治療法がなくなります。白濁した水晶体を取り除き、眼内レンズを入れるのが一般的ですが、術後の感染症によっては失明の可能性があるので、十分な注意が必要です。