広報誌「かけはし」
  
■2003年8月 No.383

「肝がん」 〜C型ウイルス肝炎を中心に〜
   
 「肝がん〜C型ウイルス肝炎を中心に〜」をテーマに、7月16日、薬業年金会館で健保連大阪中央病院内科部長の大野秀樹氏による健康教室が開催されました。
 
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●肝硬変から肝がんへ 肝炎の活動性がキー
 

大野秀樹内科部長

 ウイルス性肝炎の種類は現在のところA型、B型、C型、D型、E型、G型が発見されています。B型肝炎ウイルスは、血液感染しますが、ワクチンが開発され、感染防止が可能になりました。C型肝炎も1988年、遺伝子クローニングが実現し、HCV抗体検査の技術が進みました。現在では、抗体の検査だけではなく、HCV―RNAの定量、定性も可能です。C型慢性肝炎の診断はAST、ALTが異常であり、HCV抗体が陽性であること、さらに、HCV―RNAが検出されれば確実です。
 C型肝炎ウイルスも血液から感染します。感染後約7割の人が慢性肝炎へ移行し、その後約10年〜20年でそのうちの3〜4割が肝硬変になります。また、肝硬変の人の約7割が肝がんに移行します。もちろん、全員が肝がんになるわけではなく、肝炎の活動性と、肝臓の線維化が発がんに大きくかかわっています。
 C型肝炎ウイルスを排除するにはインターフェロンを投与します。肝炎が進行していれば、対症療法として、強力ミノファーゲンや小柴胡湯を用います。しかし、インターフェロンには副作用も多いので、症例を選ぶ必要があります。なお、小柴胡湯を使っている場合、間質性肺炎を引き起こすので、インターフェロンは投与できません。また、インターフェロンは肝硬変や肝がんへの進展は抑制できますが、投与した人全員に有効なわけではありません。

  
●早期発見には定期検診 感染防止が最大の課題
  
   肝がん発生の機序について、C型肝炎ウイルスの持続感染が直接的に発がんに結びつく経路と、肝細胞の変性、壊死、再生の繰り返しの中で遺伝子の異常が発生、蓄積され発がんに至る場合があります。肝がんの危険因子には、男性、高齢、線維化などがあります。肝がんは発生しやすいグループが非常に明確なので、それらのグループについて定期検診を行うことで早期発見が可能です。診断にはアルファフェトプロテイン(AFP)、PIVKAUなどの腫瘍マーカー、肝機能検査、腹部エコー、CTなどの検査を定期的に行います。
 肝がんの治療は外科切除のほか、肝動脈造影による塞栓療法(TAE)、エタノール局注(PEIT)マイクロ波凝固、ラジオ波焼灼などがあります。外科切除は肝臓の線維化が進展し肝硬変が高度な場合、手術できません。TAEは門脈の塞栓がある場合適用できません。PEITやマイクロ波凝固は腫瘍の数や大きさによって適用できない症例があります。C型肝炎ウイルスの感染は肝がんや肝硬変などを引き起こす、命にかかわる問題です。最も重要な課題は感染防止です。