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「厚生年金の年金改革」
― パートの適用拡大は慎重な取り扱いを!! ―
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厚生労働省の社会保障審議会年金部会は今、短時間労働者の年金の適用拡大の検討を進めている。
平成16年度の年金制度改革の中で3号被保険者の見直しを行うとともにパートの厚生年金の適用基準を変更して拡大しようとするものである。
具体的には、通常被保険者における勤務時間等の4分の3以上のものとしている現在の基準を緩和し、週の所定労働時間が20時間以上、または年収65万円以上の者を適用基準としている。
実施に当たっては@年金給付と保険料負担とのバランス(標準報酬下限の取り扱い)、A3号被保険者制度との関係、B医療保険制度における取り扱いとの均衡に留意するとしている。
現在は年金制度による検討が行われているが、これまで被保険者資格・報酬については健保・年金、ともに同一基準で取り扱っており、総報酬制導入にみられるように健康保険も同様になるのではと不安を感じずにはおられない。
医療保険制度改革の国の基本方針が決定し、拠出金制度が廃止されることを期待しながらも、平成20年度までの間、「何とか前倒しの施策を」と願うわれわれ健保関係者にとっては、パートの適用拡大は大きな問題点を含んでいることから、慎重な取り扱いを強く求めるものである。
パートの適用は保険料をこれまで徴収していなかった人たちから徴収することとなり一定の増収を見込むことはできる。しかし保険者にとっては、1人当たりの平均標準報酬が確実に下がることに対して医療費は?、老人保健拠出金は?、保健事業や事務量増にともなう経費は?、といった不安をどうしても拭い去ることができない。
とりわけ問題となるのは、今の老人保健拠出金制度は被保険者の増が確実に拠出金に跳ね返ることである。つまりパートの被保険者が多ければ多いほど拠出金は増大する。
今日、パートの人たちの支える企業は多岐にわたる。しかし、その多くは中小企業に裾野がひろがっている。また業種によってはパートの人たちが中心で成り立っている企業も少なくない。
今日の医療保険制度の危機的な状況をまねいた拠出金制度が、今度は財政の二極化を招くこととなり、新たな問題点をひきおこすことになるのである。
社保審年金部会の議論では労・使を代表する委員の議論が賛成・反対と際立っている中でも適用拡大に賛成派が多数を占めると伝えられているが、医療保険関係者にとっては大変気がかりなことである。
現在進められていることの背景は、年金制度の改善策として取り上げられているものであり、健康保険被保険者をも、同じ基準で統一すべきかも検討の余地が有るのではないか?。
パートの適用拡大は、今日の経済情勢の下で果たして、どれほどの理解が得られるのかも疑問だ。企業に与える影響は?、被保険者となる人の気持ちは?。
慎重な取り扱いを切に望むものである。 |
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(S・K) |
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