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健康セミナー「肥満と生活習慣病〜内臓脂肪症候群〜」が昨年12月10日、健保連大阪中央病院で、同病院久保正治副院長により開かれました。 |
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久保副院長 |
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●睡眠時無呼吸症候群(Charles Dickens)の世界 |
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美容上の問題としてとらえられる事はあっても、健康の面からはあまりとらえられずにいた肥満は、ここ10年の間に重要な病態と理解されるにいたり、内臓肥満、隠れ肥満などの名前は一般的に知られる言葉になっています。本日は現在に至る研究成果を紹介します。
19世紀に、英国の作家チャールス・ディッケンスは睡眠時無呼吸症候群をしめす肥満の少年を描きました。睡眠によって上気道が閉塞して深い睡眠を障害するために、昼間に傾眠傾向になる肥満少年の話でした。ここまで著明な肥満症ではない場合にも、扁桃の肥大、耳下腺腫脹、皮膚の赤色、白色伸展線などが身体的特徴です。
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●脂肪細胞の肥大が種々の疾患を起こす |
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さて、肥満はどのように判定すべきでしょうか。体重で評価するのが一番簡単です。一般的には身長から計算する(BMI)事が多いですが、個々のケースでは20歳頃の体重を目安とした方が良い場合もあります。しかし、女性の方が男性より脂肪組織が多いにもかかわらず代謝異常は少ないことなど、体重や脂肪組織の量だけでは理解できない現象も多くあり、脂肪組織の分布様式の検討も行われていました。ウエスト‥ヒップ比、男性型・女性型などがありました。
また、脂肪細胞サイズと数の検討からいうと、小児期の肥満のように細胞数の増加による肥満と成人後の肥満のように脂肪細胞サイズの拡大による肥満があることがわかり、脂肪細胞が肥大したときに種々の疾患を引き起こす事がわかりました。
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●肥満を科学的に分析する |
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大阪大学の松澤、徳永らは脂肪組織量にCTスキャンを使っていた際に、内臓脂肪が代謝性疾患と大きく関係することを発見しました。その後の藤岡、中村らの研究によって内臓脂肪は代謝異常のみならず虚血性心疾患の発症因子であることが報告されました。この脂肪は加齢や運動不足、砂糖の摂取によって蓄積することがわかっています。
ちなみにお相撲さんのおなかはほとんどが皮下脂肪で内臓脂肪はごくわずかです。その後は、内臓脂肪にターゲットを絞って遺伝子レベルでの研究がすすみ、アディポサイトカインと呼ばれる種々の物質(レプチン、PA1-1、HBEGF、アディポネクチンなど)が動脈硬化に直接的に作用していることもわかってきました。
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●肥満症の合併症 |
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実際の症例を見て頂いても、食事と運動によって肥満を改善すると糖尿病、高脂血症、高血圧、尿酸のほとんどが改善され、その間内臓脂肪量が大きく改善されるのを確認して頂けたと思います。今後はこれらの知識を駆使した治療薬の開発に期待がもてる状況です。
当院では自分では食事療法がうまくいかない方には、週末に短期間入院して食事療法を覚えて頂くコースを設けましたので、独力でうまくいかない方は一度ご相談ください。
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