広報誌「かけはし」
  
■2003年1月 No.376

最新の画像診断で何がわかるのか
   
 「最新の画像診断で何がわかるのか〜MRI・CTを中心に〜」をテーマに、健保連大阪中央病院放射線科部長の山上英利氏による健康教室が昨年11月29日、薬業年金会館で行われました。
 
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話題のMDCT 3D画像も実現
 

山上英利部長

 画像診断装置のうち、CTの最新の話題は多検出器列型の螺旋走査CT(MDCT)です。螺旋CTとは、X線管球を同一方向に連続回転させながら、検査テーブルを体軸方向に一定の速度で移動することで、被験者を螺旋状にスキャンし、その投影データを収集することが可能なCTです。これによって容積情報を取得でき、任意の断面像や種々の三次元像もなめらかに表示できます。
 多検出器列型では、さらに高速で広範囲、高空間分解能の容積情報が取得できるため、従来に比べ同じ範囲をより短時間でスキャンすることができるようになりました。これは検査時間の短縮や血流動態など高速で進行する事象の解析などにも寄与します。たとえば、18年前なら15時間はかかっていた下腿部のCTアンギオグラフィーもわずか30秒で明瞭に取得することができます。
 MDCTを使えば画像を再構成して展開図のように見たり、動画としてみることもできます。最近はCTによる大腸の描出が、注腸検査や大腸内視鏡検査に迫りつつあります。MDCTのボリュームデータから3D像を作成し、視点を大腸の中に移して内視鏡でのぞいたような疑似内視鏡像も作成することができます。
 また、ファイバースコープでは通過できないような狭窄部や、狭窄部の裏側の病変なども観察でき、内視鏡ではできないことも可能になりました。

  
革新続くMRI 脳虚血を早期発見
  
   一方、MRIは核磁気共鳴現象を利用した画像診断法で、ソフトウエア、ハードウエアともに革新が続いています。MRIを用いた血管描出法(MRA)を活用すれば、カテーテルを血管内に入れて大量の造影剤を注入したり、エックス線を浴びたりすることなく無侵襲的に、血管造影と同等の画像を取得できます。
 MRIを使って体内の組織の水の動きやすさの度合いを描出した画像を拡散強調画像といいます。生体の大部分は水でできていますが、この水は臓器や組織、正常部分と病変部分で動きやすさが少しずつ異なっています。拡散強調画像はこの特質を利用したもので、脳血栓や脳塞栓による脳虚血を早期に発見することができます。虚血に陥った神経細胞は浮腫によって腫脹し、水分が動きにくくなるため、拡散強調画像で検出しやすいからです。
 MRIはそのほか胆管膵管造影や胎児の診断、心臓や脳神経の診断など多彩な分野に応用され、その成果が期待されています。