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竹内 純 氏 |
少子高齢社会に対応し、持続可能で安定した医療保険制度を構築するために行われた平成14年度医療保険制度改正は、主に給付の統一ということが図られた。
まず「高齢者医療制度の改革」では、平成14年10月から、@患者負担を見直し、70歳以上の高齢者は定率1割負担(ただし、一定以上の所得者は2割負担)、A老人医療費拠出金等については、対象年齢を5年間で70歳から75歳以上に段階的に引き上げる。平成14年10月1日以降、70歳になった方は75歳になるまで一般の制度に残り、この5年間は新たな老人医療制度の対象者は発生しない仕組みをとった。そして、公費の負担割合は3割から5割へ、これも5年間で段階的に引き上げる。また、老人医療費拠出金の算定にかかわる老人加入率の上限30%を撤廃する。このことは被用者保険にとって、ゆくゆくは老健拠出金の増大要因になってくると思われる。撤廃により天井なしとなった30%を超える部分は財政調整ということで、被用者保険からその費用が市町村に流れることになる。
次に、本体の「医療保険制度の改革」では平成15年4月から、@保険給付の見直しで、一部負担金の割合を3割に統一。(ただし3歳未満の乳幼児は平成14年10月から8割給付)、A保険料については、被用者保険の賞与等を含めた総報酬制を導入し、健保組合でも保険料率の見直しが行われていることと思います。
また改正法附則第2条で、保険者の統合・再編の問題や新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなど6項目ほどの課題が示され、支払基金の民間法人化による事務処理の効率化・合理化、政管健保の独立行政法人化といった組織形態のあり方等についても3年〜5年といった期限を設けて検討していくことが決められている。
一般に、この14年度改正は単なる財政対策だとよくいわれるが、それだけではなく保険医療システムや診療報酬体系の改革なども同時に図られていて、ひとつの抜本改革の道筋をつけたという評価もある。向こう5年間は財政収支は均衡するといわれているが、5年を過ぎるとまた厳しい状況になると思われるので「更なる抜本改革」が必要になると考えられる。
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