広報誌「かけはし」
 
■2003年1月 No.376
医療保険制度改革の動向
   平成14年度医療保険制度改正の内容等についての広報研究会が昨年12月3日、大阪厚生年金会館で開催された。講師は(株)法研報道部長竹内純氏。
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14年改正の概要と今後の動向
 

竹内 純 氏

 少子高齢社会に対応し、持続可能で安定した医療保険制度を構築するために行われた平成14年度医療保険制度改正は、主に給付の統一ということが図られた。
 まず「高齢者医療制度の改革」では、平成14年10月から、@患者負担を見直し、70歳以上の高齢者は定率1割負担(ただし、一定以上の所得者は2割負担)、A老人医療費拠出金等については、対象年齢を5年間で70歳から75歳以上に段階的に引き上げる。平成14年10月1日以降、70歳になった方は75歳になるまで一般の制度に残り、この5年間は新たな老人医療制度の対象者は発生しない仕組みをとった。そして、公費の負担割合は3割から5割へ、これも5年間で段階的に引き上げる。また、老人医療費拠出金の算定にかかわる老人加入率の上限30%を撤廃する。このことは被用者保険にとって、ゆくゆくは老健拠出金の増大要因になってくると思われる。撤廃により天井なしとなった30%を超える部分は財政調整ということで、被用者保険からその費用が市町村に流れることになる。
 次に、本体の「医療保険制度の改革」では平成15年4月から、@保険給付の見直しで、一部負担金の割合を3割に統一。(ただし3歳未満の乳幼児は平成14年10月から8割給付)、A保険料については、被用者保険の賞与等を含めた総報酬制を導入し、健保組合でも保険料率の見直しが行われていることと思います。
 また改正法附則第2条で、保険者の統合・再編の問題や新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなど6項目ほどの課題が示され、支払基金の民間法人化による事務処理の効率化・合理化、政管健保の独立行政法人化といった組織形態のあり方等についても3年〜5年といった期限を設けて検討していくことが決められている。
 一般に、この14年度改正は単なる財政対策だとよくいわれるが、それだけではなく保険医療システムや診療報酬体系の改革なども同時に図られていて、ひとつの抜本改革の道筋をつけたという評価もある。向こう5年間は財政収支は均衡するといわれているが、5年を過ぎるとまた厳しい状況になると思われるので「更なる抜本改革」が必要になると考えられる。


開会あいさつ
広報委員長 浅井義隆
 大阪文紙事務機器  
 健康保険組合常務理事
 最近の健保組合を取り巻く情勢は、非常に厳しいものがあります。先般発表の、健保組合平成13年度決算見込みでは、1、722組合中1、337組合が赤字決算を余儀なくされ、赤字組合の割合は77.6%になっています。また、全組合の赤字総額も3、000億円を超え、過去最悪の赤字となっており、健保組合にとってまさに危機的状況といえます。
 さきの健保法改正は、暫定的な効果しか期待できないとされ、プログラム作成段階を迎えた構造改革、とくに高齢者医療制度の創設、拠出金制度の廃止は、法定期限の2年以内に必ず実現させなければ、医療保険制度は崩壊に追い込まれるに違いありません。
 このような厳しい状況下ですが、本日は竹内先生の時機を得たテーマのお話を聞き、有意義な研究会としていただくようお願い申し上げます。