広報誌「かけはし」
 
■2003年1月 No.376

   健保連は昨年12月20日の理事会で、厚生労働省の医療制度改革試案に対する見解と今後の対応の方向性を確認した「医療制度改革のあり方について」をまとめ、公表した。
 健保連は、厚労省試案について「高齢者医療制度の財政調整案」は、わが国のこれまでの保険制度の考え方や実態を無視した一方的な議論で、全く容認の余地はなく断固反対すると強く批判、将来の制度一元化の方向、国保との統合について絶対反対を表明した。
 また、都道府県単位の健保組合の再編・統合は、自主的な相互扶助の基本理念を否定するものであり反対との見解を明らかにした。

医療制度改革のあり方について
   医療制度改革のあり方についての厚生労働省試案には、未だ不明な部分が多く、なお十分な具体的検討を要する問題も残されており、本会としての最終的な見解は改めて取りまとめることになるが、本日の理事会における検討の結果は次のとおりである。なお、改革の基本方針の策定にあたっては、現実に立脚し、真に効果あるものとなるよう、本会をはじめ日本経団連や連合など関係方面の意見を十分聴取されたうえで、国民の合意形成が図られるよう強く要望する。
@保険者全体を通じて最大の問題は、高齢者医療費の財源を確保するために個々の保険者が今後とも断続的に保険料を上げ続けざるを得なく、制度の持続性について、いずれの案も明確になっていないことである。
 これにどのように対処していくのかという展望を明らかにすることが、高齢者医療に対する将来不安を解消するために必要である。
 また、診療報酬体系の合理化等、医療費とくに高齢者医療の抑制・合理化を進めていくことが、持続性のある高齢者医療制度構築のために不可欠である。
A制度改革の将来の方向としては、一元化を目指すこととされている。この具体的内容は不明であるが、一元化が高齢者医療問題を解決できるとは思われず、国保との統合という方向には絶対反対である。
B改革の中心課題である高齢者医療問題の解決について財政調整案が示されているが、わが国のこれまでの保険制度の考え方や実態を無視した一方的な議論であり、全く容認の余地はなく断固反対である。
 現行の拠出金が保険者の全くコントロールが効かない負担を一方的に際限なく賦課することにより、保険者の自立性を損ない保険制度の危機を招いているのにもかかわらず、同様の負担をさらに拡大していくことは、全く不合理というほかない。高齢者医療制度は、一般の医療保険制度とは別に運営責任が明確な保険制度として年金受給者を給付対象に構成し、高齢者と現役世代の公平な保険料と公費による運営を行い、拠出金制度は廃止すべきである。公費負担については、将来にわたって負担可能な保険料水準となるよう投入されるべきである。
C都道府県単位での保険者の統合・再編が提起されているが、保険者の運営改善や経営効率化が検討・実施されずに、単に現状のままの統合や再編では効果はほとんどないと考えられる。政管健保に対する国庫負担を廃止し、健保組合などの負担による財政支援を行うことには反対である。
 また、健保組合を都道府県単位に再編・統合することについては、自主的な相互扶助の基本理念を否定するものであり、反対である。
D今後の見通しが不確かな中で、確実に増加を続ける拠出金によって、健保組合は15年度予算編成に苦慮しているところが多い。
 改革は早期に実施される必要がある。