新しい年が明けても、時の流れは止まることを知らないが、医療制度改革は、いつまでも同じところを廻り続ける独楽の如く、動きはあるものの一向に進展をみない。我々の心境も、つい糸の切れた凧の如く風間に漂いかねないが、ここは心を引きしめて、打てば響く羽子板の音色のように、澄んだ気持ちで本年こそ健康保険組合の健全な運営のために、現状を打破したいものだ。
さて、昨年は、健保法等改正法附則を受けて、9月には、坂口厚労相私案として、医療制度改革についての考え方が公表されたが、年齢構成や所得に着目して負担の調整を図り、将来は「制度の一元化」を目指すというもので、疑問点や不明確な部分も多く、我々が受け入れられる内容ではない。
また、11月に自民党の医療基本問題調査会が発表した新たな高齢者医療制度は拠出金を抜本的に見直し、現役世代の負担の軽減を図り、受益者負担の原則から高齢者全員に保険料負担を求めるとともに、公費の増額で高齢者医療費を賄うというものであり、公費財源をどこに求めるかが大きな課題である。
このようななかで、健康保険組合全国大会が11月26日に開催された。最重要課題である「拠出金の廃止と新たな高齢者医療制度の創設」の必要性を前面に打ち出し、「自ら選択し安心できる患者中心の医療の実現」「簡素でわかりやすい診療報酬体系の確立」「自立した保険者を基盤とする保険体系の堅持」と合わせて、医療保険制度の危機と抜本改革のあるべき姿を強く訴えた。
健保財政の悪化は、紛れもなく拠出金の著しい増嵩にあるが、拠出金が廃止され新しい高齢者医療制度ができても、応分の負担は避けることはできないと考えられる。現状は、個々の健保組合の負担能力を考慮せず、高齢者の加入割合と過去の医療費の実績等による不公平な拠出金負担となっている。新制度における負担は、大阪連合会がかねてから主張しているように、保険料方式による各々の能力に応じた、より納得性の高い公平な負担とすべきである。
改正法附則では「おおむね2年を目途に新しい高齢者医療制度の創設を含む制度改革を実施」とあり、12月17日には厚労省の医療制度抜本改革試案が公表された。ある程度予測はできたものの、坂口私案と自民党案を併記しただけで、拠出金廃止の文言もなく、我々の期待にそぐわないものであった。

極めて厳しい健保財政により、解散を余儀なくされる健保組合が跡を絶たず、健保連の組織の弱体化が進む一方である。これに歯止めを掛けるためにも健保連の考え方を今後も強く世間にアピールして拠出金廃止の前倒しでの実現を切に望みたい。
(よし)