広報誌「かけはし」
 
■2003年1月 No.376

大阪連合会会長  岡澤 元大
新年あいさつ
 昨年を振り返りますと、長引く景気低迷の中でも、サッカーのワールドカップにおける日本の健闘にはじまり、我が国初のノーベル賞W受賞と、明るい話題もいくつかございました。また、特に衝撃的な北朝鮮拉致被害者の方々のご帰国など大きな歴史の変わり目を感じる事件が相次いだ年であったと思います。
 われわれ社会保険制度に携わる者にとりましては、課題山積の状況ではございますが、是非本年は明るく活力のわくような出来事が、多くありますよう願いたいものであります。
 健保組合の収支状況をみますと、平成13年度の決算は、過去最悪の3、032億円の経常収支赤字となり、赤字組合は全組合の4分の3以上にも達するなど、ますます深刻な状況に至っております。
 このような財政の逼迫を招いた最大の原因は、保険料収入の4割以上を占める高齢者医療等の拠出金制度にほかなりません。
 今後、超高齢化社会の到来を目前に控え、現役世代に過剰な負担を強いる現在の高齢者医療制度の抜本的改革を何としても実現しなければなりません。
 こうした中、昨年成立した改正健保法では、本年3月までに制度改革の「基本方針」を策定することが明記され、先月17日には厚生労働省の改革試案が公表されました。ただし、この試案においても「リスク構造調整方式」と「独立保険方式」が併記されるなど、いまだなお、はっきりした合意形成への道のりは遠い、と思わざるを得ない状況であります。
 しかしながら、今度こそ拠出金制度の廃止を実現させるべく、私たちは総力をあげて取り組む必要があります。また、形を変えた拠出金となる恐れのある「リスク構造調整方式」には断固反対していかねばなりません。
 昨年11月の健保組合全国大会においても@「拠出金の廃止と新たな高齢者医療制度の創設」A「自ら選択し安心できる患者中心の医療の実現」B「簡素でわかりやすい診療報酬体系の確立」C「自立した保険者を基盤とする保険体系の堅持」の4つのスローガンを掲げ、抜本改革の実現に向け決意を新たにしたところであります。
 冒頭ふれました、ノーベル化学賞を受賞された島津製作所の田中耕一さんの発明の背景には、出産後まもなく他界されたご母堂への思い、すなわち医療技術の進歩に貢献したいとの学生時代からの志があったと伝え聞いております。
 この志があればこそ、失敗にもめげずコツコツと実験を重ね、高度医療に役立つ画期的な技術開発へと結実したのでありましょう。
 医療保険制度の見直しについても、これまで何度も先送りにされてきた抜本改革を今度こそ実現するために、我々現役世代が、改革への志を強く持ち続けることが大切ではないでしょうか。
 国民皆保険・皆年金制度という「安心のシステム」を後世に継承するため、最大限の力を結集して展望を切り開きたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。