広報誌「かけはし」

■2002年12月 No.375
時評

’02拠出金廃止と新制度
創設を求める総決起大会

  
 
 年の瀬を迎え依然として不況の嵐が吹き荒れている。
 思い起こせば今年5月に、政府筋の景気底打ち宣言が出て同時に日韓共同開催ではあったが華々しくワールドカップが開催された。
 いよいよ景気も上向きかと多くの人達が期待を寄せた。
 ところが、ワールドカップが閉幕を迎える頃には夢からさめたようにデフレ対策の必要性が、新聞、テレビで吹き出る始末、あの宣言は一体何だったかと思う。
 このような経済情勢下での医療保険制度は、問題点が一層深刻化した一年であった。
 不況の下での被保険者の減や、報酬の低下で保険料収入が減る一方で高齢化の進行が拠出金の増加をもたらし、保険料に占める割合が50%を超え、準備金を繰り入れても追いつかない。
 平成13年度の赤字額は、組合健保3、000億円、政管健保4、700億円と史上最高となり、解散に追い込まれた組合があいついだ。まさに医療保険制度崩壊の危機である。
 健保連は、これまで赤字の最大の原因が老人保健等の拠出金にある事を訴え、拠出金制度の廃止と新たな高齢者医療制度の創設を主張しつづけてきた。
 今回の健保法の一部改正では、患者の原則3割負担と総報酬制の導入によって賞与から保険料を徴収する等の措置が講じられた。
 改正健保法附則に医療保険制度抜本改革の「基本方針を年度末までに策定する」ことが盛り込まれたため、厚生労働省、政府与党等の動きが一気に活発化することとなった。
 健保連も9月にワーキンググループを編成、主要な課題別に外部の有識者も含め、鋭意議論を進めている。
 厚生労働省は基本方針のタタキ台を作成する作業を現在行っているが、いまだ発表されていない。
 9月25日坂口厚生労働大臣は「私案」を公表し、保険者の再編・統合を各県単位で行い年齢や所得による財政調整を行って最終的には、制度を一元化する考えを打ち出している。
 この「私案」に対しては高齢者医療制度をどうするか不透明なまま財政調整と保険者統合で問題がすべて解決というのは「本末転倒」として多くの批判が出ている。
 健保連はこのように健康保険組合をとりまく情勢が変化するなかで、11月26日、14年度健保組合全国大会を開催した。
 今年の大会は従来にもまして重要な意味をもつ大会として「拠出金廃止と新制度創設を求める総決起大会」と位置づけ、基本方針策定までの道筋を明らかにし全国1、700の健康保険組合が一丸となって国会対策や国民諸階層への取り組みを進め、日本経団連・連合・関係諸団体との連携をより強化することを決めた。
 今年度中に策定される改革に向けての基本方針が、真に国民を安心させるものとなる事を切に望むと共に、21世紀における高齢社会にマッチした医療保険制度の確立を期待したい。
(S・K)