広報誌「かけはし」
  
■2002年11月 No.374

検査結果の見方
   
 「検査結果の見方〜なぜこんなに異常者が多いのか〜」をテーマに、健保連大阪中央病院健康管理センター室長の渡辺昭典氏による健康教室が10月9日、薬業年金会館で実施されました。
 
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統一される基準値病態識別値が重要
 
 近年、人間ドックの重点は病気の二次予防から一次予防にシフトしています。また、日本総合健診学会による優良施設認定や日本人間ドック学会のガイドラインによって健保と政府管掌の基準値が統一されるなど、人間ドックのレベルアップが期待されています。
 検査数値に関して、従来一番問題だったのが有所見者数を左右する基準値の決め方。基準値は必ずしも正常範囲ではなく、数学的な処理で医学的に健常者でも異常になる場合があります。従って、正常と異常の病態識別値をどこに置くかが問題です。今年、この判定基準を統一するガイドラインが改訂されました。
 集団検診は平成4年から13年にかけて激増し、日本人の1割は何らかの形で検診を受けています。そのうち異常なしはわずか14.5%。85.5%に何らかの異常が認められました。有所見が最も多いのが肝機能異常。さらに高コレステロール、肥満、腎・膀胱疾患と続きます。男性では肝機能異常、女性では高コレステロールの有所見者が最も多く見られます。肥満と関連する中性脂肪や肝機能、コレステロールは女性の場合年齢とともに増加しています。また、がん検診は肺がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん、胃がんの早期発見に有効だと考えられます。
原因は生活習慣病 ガイドライン策定を
    このように異常者が多い理由は、1・生活習慣の欧米化や社会環境の悪化などにより、健康状態が実際に悪くなっている。2・人間ドック反復受診者の増加による加齢の影響。3・専門学会による病態識別値が採用され、基準値が下がった。4・検査項目の増加、検査精度の向上により、新しい病変が発見される。といった点が上げられます。
 検診の有所見率が一番高いのが肝機能異常の26.6%ですが、そのうち90%は脂肪肝で、実際に治療が必要な人は5%程度です。ウイルス性肝炎とアルコール性肝障害のチェックさえしておけば、脂肪肝のフォローは不要とも考えられます。また、肺がん検診の最近の主流は肺CTです。非喫煙者の腺がんのほか、COPD(慢性閉塞性肺疾患)が多数発見されています。これは世界の死亡原因の第4位にランクされる喫煙と関連が深い疾患で、現在の日本では死因に算入されていませんが、今後増加してくると考えられます。
 異常者のほとんどが生活習慣病に関連しています。生活習慣の改善が異常者を減らす取り組みになります。また、検査データの共有や公開が、無用の精密検査の削減につながります。きっちりしたガイドラインの策定が必要でしょう。