坂口厚生労働大臣は、9月25日医療保険制度体制に関する「改革私案」を公表した。私案は、平成14年度中に策定される医療保険制度改革に関する基本方針の、
@保険者の統合・再編を含む医療保険制度体系のあり方
A新しい高齢者医療制度の創設
B診療報酬体系の見直し
の3点に関して示された。
私案と大きく離れることなく厚生労働省案が11月末までに示されるとのことであった。
その中で、平成19年度を目途に、国保と政管健保は、「都道府県単位を軸とした保険運営」に、健保組合は「都道府県単位に再編・統合を行うことはなかなか難しく、健保組合の自主性にまかせるしかない」として、規制緩和等を通じた規模拡大や小規模・財政窮迫組合の整理、事業所単位での選択・加入ができる新たな法人の検討があげられていた。
国保と政管健保の「都道府県単位を軸とした保険運営」について、市町村や国の運営で困難なものを都道府県単位にして、果たしてうまくいくだろうか。都道府県単位の保険者にどのような機能を持たせ医療費抑制等の保険者機能強化に努めさせようとしているのかとの疑問の声があがっているのは、率直な反応ではないだろうか。
健康保険組合の場合についても同様である。健康保険組合の事業運営に関しては、公的医療保険の枠組みのなか、行政として細部まで指導してきたとはいえ、発言のなかで「小さな健保組合が乱立していることは避けなければならない」との言及はいかがなものかと考えるのは筆者だけであろうか。
保険制度の性質上、「大数の法則」が働く程度の規模は確かに必要であろう。
しかし、多くの健保組合は、被保険者数の大幅な減少、標準報酬の伸び悩みに伴う保険料収入の減少とともに、老人保健拠出金および退職者給付拠出金が組合財政を圧迫した結果として運営に苦慮している現状である。
民間企業において合併や統合が行われることがここ数年もてはやされたが、海外でもM&Aで成功した企業は、3割にも満たないという事実が、次第に明らかになってきている状況である。個々の健康保険組合の問題点を十分把握した上で、問題解決の方策としての統合・再編が行われない限り、同様な結果を生じると考えられる。
健保組合の自主性を真に尊重した厚生労働省案を期待したい。
(Y・K)
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