広報誌「かけはし」
■2002年10月 No.373

狭心症と心筋梗塞
   
 健保連大阪中央病院副院長の久保正治氏による健康教室「狭心症、心筋梗塞の新しい治療とその概念」が9月10日、薬業年金会館で開催されました。
 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

日ごろから注意を無症候性心筋虚血
 
 狭心症には安定労作性狭心症と、心筋梗塞に移行する可能性のある不安定狭心症があります。冠攣縮性狭心症といって安静にしている時にもおこる狭心症もあります。心筋梗塞は心臓の冠状動脈に動脈硬化巣や血栓ができ、血管が完全閉塞した結果、その先が梗塞して発症します。暖かいところから急に寒いところへ出た場合や、喫煙、飲酒などが発症の契機となります。通常、痛みを伴いますが、場合によっては痛みを感じない無痛性(無症候性)心筋虚血もあります。この場合、自覚症状がなく、心電図の異常所見などから発見されます。症状がないからと安心はできません。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の代表的な自覚症状は前胸部が締め付けられるような痛みですが、胃腸のあたりからみぞおちにかけて締め付けられるような感じや、のどから胸骨上部にかけての不快感や痛み、歯痛、肩こり、息苦しさ、倦怠感、ふらつき、運動時の手足の冷感などを訴える場合もあります。このような症状があれば、虚血性心疾患も疑ってください。
 過去、虚血性心疾患の発生率が高かったアメリカでは、この20年ほど、教育プログラムによる啓発を展開し、成果を上げています。インターネットでも心臓疾患のリスクスコアテストなど興味深い情報が提供されているので、一読をおすすめします。※
 虚血性心疾患が、食養生で改善されない場合、コレステロールを下げる薬を使用すれば、虚血性イベントの発症頻度が低下することがわかっています。さらにカテーテルで狭窄部の血管を拡張し、血流をよくするPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)という治療法もあります。これは非連続性で狭窄の幅が短い動脈硬化巣向きです。一方、石灰沈着がある場合は、金属の網で血管を広げるステントが向いています。ほかにロータブレーターなどの治療法が開発されています。
 しかしこれらの治療法の前に、自分の注意でできることはきちんとコントロールするということが虚血性心疾患の重要な予防法です。EPA(エイコサペンタエン酸)のような不飽和脂肪酸を多くとる、砂糖を控えるといった食養生も重要です。また、心臓病治療をしている人は、バイアグラの使用を避けてください。ニトログリセリンなどの亜硝酸系の薬との併用は血圧が下がりすぎて危険です。
 日本の虚血性心疾患の原因疾患のうち、高血圧症や高脂血症については、薬剤の進歩のおかげで治療は容易になってきましたが、コントロールの難しいものとして糖尿病が残りました。糖尿病から発症するケースが多く見られますので、糖尿病はしっかり治療し、心臓のチェックも欠かさないでください。自分で疑わしいと思った場合は、無症状でもまず、検査を受けていただきたいと思います。
   ※http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=1200000