広報誌「かけはし」

■2002年9月 No.372
時評

 
「うつ」を防ぐ
 
 「『うつ』を防ぐ」をテーマに、大阪府立心の健康総合センター診療課長の漆葉成彦氏による心の健康講座が、8月23日、薬業年金会館で開催されました。

増えるうつ病
ストレスが原因
 最近、職場と関連したストレスや環境の影響で、軽症や中等症のうつ病が増加しています。そのままでは自殺につながりかねない例もみられますが、認知療法やストレス解消手段を練習することによって、うつ病の一次予防がある程度可能であることが解明されています。
 うつ病予防にはまず、適切なストレスマネージメントが大切です。ストレスの原因となるストレッサーが人間の心に作用し、ストレス反応が生じます。ストレスが強すぎたり、対処がうまくいかないと、不安やいらいら、怒り、うつ、肩こり、頭痛、動悸などストレス反応の悪い面が現れ、さらに進行するとうつ病を招くこともあります。ストレッサーをどう認知し、どう行動し、どうストレス反応を軽減するかが大切です。ストレスを受けやすい性格の人はうつになりやすいと考えられます。
漆葉成彦診療課長
 たとえば、まじめで几帳面で、人に対する配慮や責任感が強く、完璧主義の「過剰反応タイプ」の人。また、上昇志向が強く、競争心が旺盛なタイプA行動パターンの人も同様です。うつ病になりやすい人の考え方の特徴としては、全か無か、黒か白かといった考え方、一般化のしすぎ、マイナス思考、独断的推論、拡大解釈と過小評価、感情的決めつけなどがあります。誰の心にもそういった傾向はありますが、行き過ぎるとうつになりやすいので、自分の心の癖を知って修正することが大切です。

「認知の修正」で予防
リラックスも有効
 ストレスに弱い人は「〜ねばならない」「〜すべきだ」といった硬直した不合理な考え方にとらわれがちですが、このような考え方を論駁(ろんぱく)し、自分の考え方の癖を修正することが「認知の修正」です。実際にはグループで話し合い、他人の意見を聞きながら、ものの考え方、認知を修正していきます。
 そのほか、うつ病を防ぐ大事な方法の一つとして、まずリラックス、休養があげられます。短時間でリラックスする方法としては、呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法、イメージ法、アロマセラピーなどがあります。また、幅広い趣味や娯楽、スポーツを楽しんだり、他人とのコミュニケーションや相談も有効です。大切なのはいろいろな方法を少しずつ実践し、柔軟に対応すること。少しずつストレスを解消していくことです。
 職場では過労を防ぎ、休日を増やして、仕事をコントロールすること、相談や愚痴をいえる環境も必要でしょう。軽症、中等症のうつ病は、このようにものの見方や行動を修正することによって予防が可能です。