広報誌「かけはし」

■2002年9月 No.372
時評
…健保連「改革推進のための視点」発表…

健保連は、9月5日の常任理事会で「改革推進のための視点」をまとめ発表した。
 また同日、当面する課題を議論するため「@拠出金制度の法制面からの検討A医療提供体制(地域医療計画、臨床研修制度等)の検討B財政調整(リスク調整など)の論点整理C保険者の再編・統合問題と事業共同化の検討」の4つのワーキンググループを発足させた。


「改革推進のための視点」 (要旨)
 医療改革の基本方針について健保連も強い関心と期待をもち、検討を進めたいと考えているが、とりあえず現在の議論等の状況で問題と思われることを明らかにしておく。また、今後の議論は根本に立ち返って国民にわかり易い形で行われるべきであり、関係資料の公表を含め厚労省の一層の尽力を期待したい。
(1) 医療改革の目標と改革で解決すべき問題点を具体的に明らかにする必要がある、とくに国民にとって改革により何がもたらされるかを明示すべきである。
(2) 改革は社会保険方式の存続が重大なポイントである。わが国は年金も介護も医療も社会保険方式を基軸に制度が作られている。
 このような保険主義は今後も医療保険制度の中核として維持されるべきであるが最近の国会論議や報道等をみるとこのような考え方が弱くなっていることを憂慮する。
(3) 給付と負担の公平の具体的な意味が明確でない。
 まず、今の保険制度で解決すべき不公平問題は何かが明らかでない。
 健保連は世代間の公平が最大の課題と考え拠出金制度廃止を重点にしている。
 改革の効果として現状と比較した数字を根拠に「国保負担増」などの報道があるが現状と比較して不公平がどのように是正されたかが問題にされるべきだ。
(4) 財政調整は当然必要との意見があるが、何のために行うのか明らかでない。
 ドイツのリスク構造調整は保険者間の競争条件整備が目的とされているが、目的や限界をめぐり今なお議論がされている。日本の議論は給付と負担の公平ということだろうが何が公平かがもっと明確になるべきで理念としては不十分だ。
 一方で保険者機能強化の議論もあることを考えると2つの考えの具体化は曖昧なままになっている。
 給付と負担が同一になるなら現実は一本化と同じで個別の保険者は存在の余地がない。一本化が進んでいるオランダの実情などもっと解明する必要がある。
 わが国は被用者保険と国保が併存する二元的体系になっている。国保には都市部に未納者が多いなど解決すべき固有の問題が多いが国保改革の議論が全くされていないのが今日の改革論議の欠点である。
(5) 政管の分割、国保の都道府県単位集約という意見もあるが、これらによって何が解決できるかが明らかにされるべきである。
 国保統合の方向は理解できるが実態をどうするかが明らかでないままの集約だけが先行しているのは理解できない。
(6) 高齢者医療制度は、国家全体としての取り組みが必要な問題である。
 地域毎に進行度に大きな差のある高齢化への対応が地域ごとに対処できないことは年金制度を考えれば自明のことと考えられる。
 地域の役割はきめ細かいサービス提供などの面であり財政的骨格は全国規模の構想が必要だが、現在の議論は国の責任が明確でなく地域の責任と財政調整でという印象が強い。