広報誌「かけはし」

■2002年8月 No.371
時評

診療側の痛み

 
 今回の医療制度改革は小泉首相のかかげる構造改革のメインテーマの一つとして「三方一両損」を合言葉に保険者側、診療側、患者側がともに「痛み」を分かち合うという小泉改革が自民党の厚生族を中心に激しくぶつかり合いながら、7月26日に健康保険法等の改正案が成立した。
 三方一両損のうち、診療側の痛みについては4月からマイナス改定された診療報酬が大きなウエイトを占めている。医療費決定の場は中央社会保険医療協議会(中医協)である。
 中医協はいかに医療費を賄い、いかに医療費を使うかを決定する。厚生労働大臣は診療側、支払い側、公益側の三者からなる中医協の答申を受けて、診療報酬や薬剤の保険点数を2年置きに改定している。
 ところで、この4月から診療報酬が1・3%引き下げられたことは異例ともいえることであり、薬価等の引き下げ1・4%も診療報酬に振替えないことになった。合わせて2・7%の引き下げは医療制度改革の第一歩として評価される。
 その主な内容をみてみると、@頻回受診の是正や慢性期入院医療の評価、包括払いの拡大など、A医療技術の適正評価については、医師の経験年数、年間症例数等を基礎とした施設基準を設定した手術の範囲を110項目と、そのほかペースメーカー移植や乳児の手術などについても基準を設定し、施設基準に適合していない医療機関にあっては所定点数の100分の70に相当する点数により算定。B薬剤については、長期投薬に係る規制の原則撤廃、後発医薬品の使用環境の整備、205円ルールの原則撤廃。Cそのほか、小児の急性期の入院や地域の小児科医による休日・夜間診療体制を評価し、またがん患者等に対する医療の充実として、緩和・ケアチームによる診療等を新たに評価したこと、特定療養費制度の拡大として予約診療にかかる時間制限の緩和、大病院における再診、保険医療と併用できる新医療の範囲の拡大(治験中の医療用具、保険収載前の医薬品等)などである。
 以上の改定により大阪府社会保険診療報酬支払基金における診療報酬支払確定金額は平成14年4月診療分対前年同月比95・5%(医療保険合計、本人)同5月診療分95・6%となり、まだ2ヵ月の実績ではあるが、今のところ健保組合にとっては診療報酬引き下げの効果が出ていると言えよう。
(克)