広報誌「かけはし」

■2002年6月 No.369
時評

規制緩和と自主性

 
 健康保険組合の事業運営に対する規制が大幅に緩和されようとしている。
 昭和35年に設けられた事業運営基準は、よくいわれる「箸の上げ下ろしまで指図される」ほどこと細かく示され、健保組合は一律に指導・監督を受けてきた。そこには、組合の独自性は全く有り得ない。
 その運営基準が全面的に見直されることになったのだ。
 これまでにも、平成10年に組合予算が認可制から届出制になったほか、文書保存取り扱いや健保組合の合併・事業所編入に関する事項など、いくつか見直し・緩和が図られている。時代の変化とともにそぐわなくなった事項もあるから当然であろう。
 健保連は4月5日に厚生労働省と見直しに向けた意見交換を行い、検討会を設置して4月26日に初会合を開いた。
 今回の見直しは、各組合が実情に応じて自主的な判断のもと事業を行える方向で、厚生労働省では夏ごろまでに案をまとめ15年度からの運用をめざすという。
 また、運営基準の見直しと並行して、医療制度改革に向けて「保険者機能の強化」がいわれている。保険者が自主性と責任を持ち、個々の裁量で事業運営にあたれるようにするというものだ。
 これまでは一律の規制により、組合の事業内容はほぼ横並びで他と大きくかけ離れることはなかった。
 しかし、この大幅な見直しと機能強化が図られると、健保組合の役割は大きくなり、その分、責任も重くなる。保険者機能についても運営基準の見直しとともに十分な検討が必要である。
 しかし、これらの規制緩和や機能強化により保険者の体質向上がはかられるとしても、この財政の厳しい状況のなか、健保組合の体力が持たなければ元も子もない。健保連発表の平成14年度の健保組合予算見込みによると、拠出金が保険料収入の5割を超える組合が4分の1になるという。また、全組合の9割以上が赤字で、その赤字を埋めるため準備金さえ取り崩している。
 健保連が主張するように拠出金を廃止し、新しい高齢者医療制度を早急に創設して本当に被保険者のために保険者本来の機能が発揮できるよう体制を整えてもらいたい。
(克)