広報誌「かけはし」
■2002年5月 No.368
時評

 「そのとき、歴史は動く」
 ―健保法等改正案、本会議上程に想う―

   
 4月19日の衆議院本会議で、「健保法等改正案」の趣旨説明と24日の厚生労働委員会において提案理由説明が行われた。この「かけはし」が発行されるころには、どのような審議状況になっているだろうか。
 健保連が主張してきた「拠出金を廃止して、新しい高齢者医療制度を創るという目標」からすれば、期待に反するものであるとはいえ、当面とり得る方策として、この法案の速やかな成立を願うものである。
 一方、健保連の「平成14年度健保組合予算見込み状況」では、9割を超える健保組合が赤字予算を編成、保険料に占める拠出金の割合が44%に達し、4分の1を超える健保組合が50%を超えるとのことである。
 収入の減少と老健拠出金・退職者給付拠出金の増加がその主要因であることは否めず、診療報酬のマイナス改定も焼け石に水、前述の「健保法等改正案」も財政改善上の有効性は疑問であり、今年度も解散を余儀なくされる健保組合の増加が予想されているのは、残念なかぎりである。
 健保組合設立にあたっては、認可要件の1つに財政上、保険料収入に対する法定給付費+老健拠出金+退職者給付拠出金の割合が7割5分程度との基準があるとされている。現状からすると設立の当該要件は、まさに絵に描いた餅である。大阪では平成9年度以降新設健保がないのもうなずける。
 本来、健保組合は「自主的・民主的運営」「いきとどいたサービス」「有利な給付」「すぐれた保健事業」「弾力性のある保険料率」を特長として設立され、運営されてきたはずである。このままでは本来の健保組合のあり方から程遠い状況であると考えるのは筆者だけであろうか。
 本来の健保組合運営に少しでも近づけるべく健保組合・事業主の努力は当然であるが、健保連としても「健保法等改正案」の成立過程(各国会議員の対応状況の情報連携等を含め)に注目するとともに、「新しい高齢者医療制度の創設」における組合員個々の想いを取り込み、受身でなく、本来の健保組合のあり方を再認識するなか、真摯に取り組んでいかなければならない。
 「そのとき、歴史は動く」である。
(Y・K)