広報誌「かけはし」
■2002年2月 No.365

   保健婦連絡協議会研修会が1月23日、健保連大阪中央病院で開催されました。保健婦活動報告と意見交換会のあと、健康保険組合連合会保健部保健婦業務室長の飯島美世子氏による講演が行われました。
  ※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。
保 健 婦 活 動 報 告

   今、事業所から求められる活動とその役割
朝日新聞大阪支部健康保険組合 大西 友子氏
   当健康保険組合の健康相談室が、特に最近事業所から求められている活動は@メンタルヘルスとA分煙対策の取り組みの2つです。メンタルヘルスに関しては、最近社内の組織改編や職員の逓減が進んだり、職員の配置転換も増加し、それと共に社員のストレスが増しているのが現状です。事業所でも徐々に問題意識が高まり、パンフレット作成など様々な取り組みを行っています。今後は緊急時に紹介できる地元の施設の情報などが必要だと考えています。
 数年前から始められた分煙対策は、当初あまり盛り上がりませんでした。最近になって現場の具体的な苦情から進められるようになり、社内の安全衛生委員会の中の分煙問題小委員会を中心に取り組んでいます。最近は喫煙所を設けるなど、具体的な対策が進められています。やはり事業所の協力や理解のある保健婦活動が大切ではないかと考えています。

   当社の健康診断と健康管理活動
日本鋼管継手健康保険組合 吉田 美奈子氏
   当社では、年2回の健康診断と、年1回の特殊健診を合わせ10項目の健康診断を実施しています。各個人のデータはコンピュータに入力し、5年間保存しています。有所見者には項目別に再検査通知を行い、受診後結果を通知しています。受診率向上を図るために、各職場長には再確認を行うよう要望し、100%の受診率を保持しています。心電図検査に関しては、記入用シールを2部作成するなどの対策で、社内の改善提案表彰の部長賞を受賞しました。
 そのほか、保健活動の一環として年3回の栄養指導、衛生週間の健康教育などを行っています。体力つくりのためには、会社に近いスポーツクラブの法人会員になり、社員が利用できるようにしたり、ウオーキングラリーなども開催。このように各自にあった方法で健康を維持するよう、産業医と家庭、安全衛生担当者が連絡を密にし、健康管理活動を推進しています。


それぞれの報告に対して活発な質問が…

   電子メールによる健康相談
住友金属健康保険組合 栗岡 住子氏
   当健康保険組合では電子メールによる健康相談を7年前から実施しています。面談との違いは電子メールなら通信環境さえあれば、24時間いつでも、どこでも利用できること、相談者がそこにいなくてもいいということ、匿名性があること、相談者が他の人を装う自己演出が可能であること、周囲にわからないといった点があります。
 そのメリットとしては、業務をコントロールしながらの対応が可能であること、相手に直接送信するのでフォローしやすいということ、相談記録が残しやすいことがありますが、情報量が少ないといったデメリットもあります。ケースによっては面談への切り替えも必要です。
 メール相談は大体30代が中心で、利便性が高く質問しやすいのか精神的な相談も多くみられます。若い層は成人病予備軍でもあり、早期段階でのフォローも可能で一次予防にも効果的です。ただ、個人情報の保護、クイックレスポンス、自己演出された情報などへの注意が必要だと考えています。

報告のあと質問にフォローも

講  演

   今、私たちに期待される保健活動と展望
健保連保健部保健婦業務室長 飯島 美世子氏
   保健事業の展開には、戦略と戦術と技術の3つが必要です。私たち専門スタッフは、プロフェッショナルとしての技術を持つだけでなく、戦略と戦術を考えないと効果は上げにくいでしょう。そして効果を得るためにはハイリスクアプローチと、ポピュレーションアプローチの2つの視点を持って事業を進めていただきたいと思います。また、保健事業は一律に実施するのではなく、対象者のニーズに応じて層別に提供することが必要で、ソーシャルマーケティングの考え方も取り入れていく必要があるでしょう。

飯島保健婦業務室長
   健康教育を行うにあたっては企画力と正しい知識、正確なアセスメント、知識の伝達力、支援技術、評価技術がポイントです。これらは個別健康教育の教材に盛り込まれており、一定の実績を上げているのでぜひ学んでいただきたいと思います。
 今後求められることとして、職域と地域の連携があります。今「生活習慣病予防のための地域・職域連携保健活動検討会」が厚生労働省で議論されており、そこでは生涯にわたる一貫した健康づくりの支援体制が必要であるとしています。連携によって、正確な個人ごとの健康状態が把握でき、より適切な保健指導が可能になります。地域では、生涯を通じた適切な健康指導が受けられるようになり、職域では地域保健の資源が活用できるというメリットがあります。
 今後の保健活動の課題として、@生涯健康を目指した健康づくりA元気老人づくりB「労働環境・作業方法と健康」の視点C健康管理のリスクマネジメントDプライバシーに配慮した健康情報の取り扱い、の5点が上げられます。特にDは、職場の風土に応じた対応が重要です。