広報誌「かけはし」
■2002年1月 No.364
時評
●健康保険組合を崩壊させない
   真の制度改革は実現されていない!
   新年号早々から物騒なタイトルを付けたが、平成14年度からの医療制度改革の内容によっては、現実に起こりうる話である。
 昨年12月5日に開催された健康保険組合全国大会の会場は怒りが充満していた。
 政府・与党社会保障改革協議会がまとめた「医療制度改革大綱」は我々が期待していたものと大きくかけはなれ、「厚生族議員と日本医師会の政治的圧力に屈したものである」との認識である。
 加えて、昨年末に14年度予算編成の重要事項が確定した。それによると拠出金制度は「存続」、医療費総額抑制は「指針を定め方策を検討」、診療報酬改定は「平均2・7%の引き下げ」である。
 小泉首相はこれで「三方一両損」は達成されたと胸を張ったが、内容から見て真の制度改革が実現したとはとても言い難いものである。
   
   医療保険制度は一元化させない!
   「大綱」では「医療保険制度改革の基本的視点として国民皆保険制度を堅持し、限られた財源の中で、将来とも良質で持続可能な皆保険制度をどう再構築していくことができるかである」と述べている。
 そうであるならば、なぜ制度の一元化を将来の方向性として検討しなければならないのか、理解に苦しむところである。加えて、保険者の自立性・自主性を尊重するとしながらも、保険者の集約化や統廃合、さらには大幅な規制緩和等を進めて行くという論理は筋が通らないのではないか。
 真の医療保険制度とは、効率的で自立した保険者を基盤とすることによって、初めて制度的安定が可能となり、その基盤があってこそ、患者中心の医療の実現が図られるのである。一元化された独自性のない制度では、保険者機能を損なうことになり、それこそ保険制度の崩壊につながる。したがって一元化は絶対に容認できないことを我々は、強く訴えたい。
   
   健康保険組合を存続させよう!
   日本の医療保険制度の長い歴史を振り返るとき、健康保険組合が果たしてきた役割は、言葉では言いつくせないほど大きい。
 現在、健康保険組合は拠出金という”凶器“により、存続か、解散かの剣が峰に立たされていると言っても過言ではない。
 事業主や被保険者から、もうこれ以上の負担は無理だから解散しようという議論も聞こえてくる。
 健康保険組合の優れた機能や、国や地域の医療費負担軽減に貢献している現実をもっと評価すべきである。
 したがって、「大綱」で示された、持続可能な制度を再構築するには、制度の基盤を揺るがす拠出金を廃止し、保険料方式による新高齢者医療制度を創設することである。この道筋が明確になれば我々の健康保険組合は存続できるし、優れた機能をもっと発揮でき、国と国民にとって最も望ましい、真の構造改革になるものと信じてやまない。
  (進)