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■2002年1月 No.364 |
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年明け早々、健保連大阪中央病院がスポットを浴びた。副院長でもある大橋秀一・外科部長(58)が週刊現代1月5・12日号の特集記事「ガンの名医ベスト100人」の中で名医の1人として紹介された。大橋外科部長から大阪中央病院のがん治療について聞いた。 |
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週刊現代の記事は、がん患者やその家族、医師の有志などで構成する全国各地の「患者の会」20団体から、胃がん、大腸がん、食道がん、肺がんなど部位ごとに分けて名医を推薦してもらいまとめたという。
大橋外科部長は胃がんの部で「患者に負担の少ない低侵襲手術を旨とする。腹腔鏡下胃手術を考案」と紹介されている。腹部を切り開いて手術するより患者の負担が軽い内視鏡手術の医療技術が評価された。
大橋外科部長は、大阪大学医学部内視鏡外科教授から、昨年4月、大阪中央病院の副院長兼外科部長に就任した。わが国の腹腔鏡手術の権威として知られ、大阪中央病院を「ビジネスマンの病院」にしようという正岡昭院長が後輩の大橋教授を「ぜひに」と迎えた。
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日本の名医100人に選ばれた
大橋副院長 |
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大阪中央病院は健保組合連合会の病院であり、ビジネス街に近いという地理的条件からサラリーマンの受診者が多い。勤務時間をやりくりしての患者が治療後、できるだけ早く職場復帰できる「急性期治療中心の都市型病院」が大阪中央病院のめざす姿だ。
例えば、胃の手術をする場合、従来だと患者の腹部を切開する。内視鏡手術だと、腹部に直径1センチの穴を4ヵ所開け、金属棒を通して、カメラ(内視鏡)や微小の手術器具を内部に送り込む。スタッフは拡大されたモニター画面を見ながら手術を進める。開腹手術にくらべ手術後の回復期間は短い。忙しいビジネスマンには特にありがたい。大橋外科部長が大阪中央病院に就任してから、内視鏡手術の患者は2倍以上増え、平均1日1回この手術をしているという。 |
●病院から出勤も |
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大橋外科部長にインタビューした。
―週刊現代の「名医100人」に選ばれた感想は?
「内視鏡手術が社会に評価されてきたことだと思います。内視鏡手術はまだ10年ぐらいの歴史しかありませんが、米国につぐレベルです。米国では外科手術の半数以上が内視鏡手術ですが、日本では、まだ4分の1から3分の1です」
―大阪中央病院では、内視鏡手術の件数が急速に増えていますね。
「この病院はそれができる地理的条件に恵まれています。おそらく日本最高でしょう。恵まれた条件を生かして、この分野をもっと広げていきたい」
―具体的には?
「旅行と一緒で、医療サービスも”安・近・短“は大切な要素です。職場から近い病院。早期退院で職場復帰が早い。その分、治療費も安くなる。よい医療サービスを安く提供する。ユニクロみたいな考え方です。背広を着て入院して、病院から職場へ直行するような形にしたい。ビジネスマン向けの医療サービスの充実が大阪中央病院の進むべき方向だと思います」
―以前勤務していた兵庫県の病院などと比較して大阪中央病院はどうですか? |
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「最初は不安でした。なにしろ地域住民ゼロですからね。以前の病院だと、じっと座っていても患者が来てくれたが、ここではそうはいかない。努力が必要です。そのかわり、努力すればそれがストレートに答えが返ってくる。やりがいがありますね。私の得意分野である内視鏡手術を発揮できる病院に迎えられてホントによかったと思います」
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モニター画面を見ながら遠隔手術を支援する大橋氏ら |
●増える内視鏡手術 |
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―大阪中央病院で、内視鏡手術を今後どのように充実させていく計画ですか。
「大阪大学にいた頃、ノルウエーの病院と衛星通信でモニター画面のやり取りをしながら手術のアドバイスをしたことがあります。モニター画面を拡大できるので精度も高まります。将来は、大阪中央病院から、遠く離れた場所で手術をアドバイスするセンターの役割を持たせたい」 |
●宇宙でも手術OK |
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―ロボットを遠隔操作して内視鏡手術をすることも可能ですね?
「ふつうの市民がハワイやヨーロッパに旅行するような感覚で宇宙旅行に出かける時代がいずれやってきます。一度にたくさんの旅行客が宇宙船に乗り、長期にわたって宇宙基地や地球以外の惑星に滞在するでしょう。もちろん医師も同行しています。でも、限られた人数の医師が大がかりな手術をする事はむずかしい。しかも、無重力状態で開腹手術はできません。患者の血液が空間に流れ出てしまうからです。内視鏡手術なら大丈夫です。宇宙船に同行する医師は必ずしも人間である必要もありません。ロボットでいい。地球からロボットを遠隔操作しながら手術ができます。内視鏡手術の可能性はまだまだ広がっていきますよ」 |
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(聞き手 広報委員・佐藤孝仁) |
大阪中央病院の未来について語る大橋副院長
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