広報誌「かけはし」
■2002年1月 No.364

大阪連合会会長  岡澤 元大
新年あいさつ
 21世紀最初の年である昨年は、「戦」(いくさ・たたかう)の一文字で代表される激動の年となりました。アメリカでの同時多発テロ事件で世界情勢が一変したほか、狂牛病の発生や、長引く不況による失業の増加等で、生活そのものがいわば戦場となった、重苦しい世相の1年であったと言えましょう。
 健康保険組合の収支状況についても、一向に展望は開けず、平成13年度は前年度の約5割増しとなる史上最悪の4、900億円弱の赤字が見込まれております。拠出金の合計が保険料収入の4割を超え、赤字組合の割合が9割近くに達するなど、健康保険組合の存続は、まさに崖っぷちに立たされている状況です。
 このような中、昨年末に医療制度改革の概要がとりまとめられました。確かに、形としては、患者・医療機関・保険者の三者がそれぞれ痛みを分かち合う「三方一両損」の体勢は一応整えられております。ところが、その内容は、医療費総枠の伸び率管理制度の導入が見送られ、拠出金制度が存続するなど、制度改革の最大の目的である「制度の将来的な継続性」が担保されているとは言いがたい、誠に不本意なものと言わざるをえません。しかし決してこれで改革が終わったわけではありません。医療保険制度のあるべき姿を目指し、引き続き抜本改革実現のための活動を続けていく必要があります。このため、昨年12月の健康保険組合全国大会においては、「拠出金の廃止と持続性のある高齢者医療制度の構築」「平成14年度政府予算編成における緊急財政支援措置」「実効性のある医療費抑制の実施」などのスローガンを採択し、決意を新たにしました。
 ここで、あらためてアメリカでの同時多発テロ事件をみますと、その背景には、本来、人を幸せにすべき教えである宗教が、互いに対立することによって、幸せとは逆に、多くの人々を惨禍に陥れるという悲劇的な構図がみてとれます。
 医療制度改革においても、患者・医療機関・保険者がただ対立しているばかりでは、もはや解決は図れないのではないでしょうか。東洋の知恵である仏教の教えに、「対立を排除し、調和を実現する」との意味で用いられる「中道(ちゅうどう)」という言葉があります。すべての国民が病気を克服し、健康な生活を送れるようにするという、当事者全員に共通した本来の目的を達成するために、それぞれの立場の違いを乗り越え、調和のもとに、改革への道筋を求めていくことが必要ではないかと思います。
 昨年の末には、皇太子ご夫妻に内親王さまがご誕生になるという、大変喜ばしい出来事がありました。新しい世紀の担い手となる子供たちに、わが国の国民皆保険・皆年金制度というすばらしい財産をしっかりと継承できるよう、皆様の英知を結集して難局に立ち向かいたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。