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■2001年12月 No.363 |
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「アルツハイマー病の診断と治療」をテーマに健康教室が11月27日、薬業年金会館で開かれました。大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室の工藤喬助教授が講演、大変盛況でした。 |
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高齢化に伴い痴呆症は高頻度で起こる病気として重要な問題となっています。我が国の2000年の65歳以上の高齢者は17%(2170万人)で、うち6%(160万人)が痴呆老人となっています。その数は5年毎に倍増、2050年には65歳以上の高齢者が30%を占め、有効な治療法が見つからなければ、痴呆老人が400万人に達すると予測されています。
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スライドを使って説明 |
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アルツハイマー病の発症メカニズムとして、アミロイドカスケードが考えられています。これはアミノイドβ蛋白が沈着し老人斑が現れるもので、これにより神経機能が低下し、痴呆が起こります。またアルツハイマー病脳の生化学的変化として、タウ蛋白の過剰なリン酸化があります。これはタウ蛋白が過剰リン酸化し不溶化し神経原線維変化を起こすものです。
アルツハイマーの数%は遺伝が原因の家族性の発症ですが、これ以外の危険因子として、加齢、女性、ダウン症があり、さらに、頭部外傷の既往や教育歴(低学歴)、甲状腺疾患、重金属(特にアルミニウム)の関与などが挙げられます。 |
●進歩する診断・治療方法 |
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痴呆とは「記憶」と「判断力」の障害により、社会生活能力が低下した状態であり、診断においては、「HDS―R」や「MMSE」などの認知機能検査が用いられますが、それ以外に脳の萎縮(特に側頭葉と海馬)を見る「MRI」や脳の血流を測る「SPECT」などの画像検査、遺伝子変異やアポリポ蛋白Eの型などをみる血液検査、髄液中のタウ蛋白量の測定等を行います。また鑑別診断として、せん妄との鑑別、仮性痴呆との鑑別、治療可能な痴呆との鑑別、脳血管性痴呆との鑑別、その他の変性痴呆との鑑別も大切です。 |

工藤 喬助教授 |
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うつ病性仮性痴呆は適切な抗うつ剤による治療で回復します。また治療可能なアルツハイマーとして慢性硬膜化血種、脳腫瘍、脳髄膜炎、甲状腺機能低下、電解質の異常、薬物による痴呆状態などがあります。
現在、アルツハイマー病についての根本的な治療はありませんが、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で痴呆の進行をとめる試みがなされています。さらに痴呆と正常の境界域の人々に積極的にこの阻害薬を使うということもされはじめています。
さらに最近では、抗炎症剤治療、女性ホルモン治療やアミロイドワクチンなど新たな治療法も出てきています。介護者の支援など重要な問題です。 |
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