広報誌「かけはし」
■2001年11月 No.362



 日本で増加している糖尿病の大部分は、肥満が原因で起こるインスリン非依存型糖尿病(NIDDM 2型糖尿病)です。NIDDMは、肥満によって末梢組織でのインスリンの働きが低下したり、膵臓でのインスリンの分泌量が少なくなったりするものです。生活習慣が要因と考えられ、中高年に多くみられます。NIDDMは軽症の段階であれば、運動療法と食事療法を行うだけでほぼ状態が改善されることが分かっています。
 大阪中央病院
 整形外科医師
   金子元春 氏
 
■運動療法の目的
 糖尿病患者さんが運動療法を行う目的は三つあります。
 第一は、インスリンの感受性を高めることです。糖尿病の患者さんでは、末梢組織のインスリンに対する感受性が低くなっているのですが、適切な運動を行うことによって、これを高めることができます。
 第二は肥満の解消です。肥満は運動不足によって起こりますから、運動療法でエネルギーの消費を増やせば肥満を解消することができます。
 第三は、心臓や肺の働きを強くし、全身の血液循環をよくすることです。
 以上より、脂肪の利用率が高く、筋肉や心臓・肺などに負担の少ない有酸素運動を持続的に行うことが効果的です。しっかりと呼吸しながらなるべく全身を使う運動(ウオーキング・水泳・水中歩行・サイクリング・エアロビクスなど)を行いましょう。
 ただし、糖尿病性網膜症や腎症などの合併症、高血圧や心臓病などのある場合は運動によって症状が悪化する恐れがあり、運動を避けなければならないこともありますので、運動療法をはじめるにあたっては必ず主治医と相談してください。
 
■運動療法の注意
 ウオーキングはいつでも、どこでも、ひとりでも、簡単に、比較的安全にできる運動として、運動療法を始める際に理想的なものですが、歩きすぎると腰や膝の関節を痛めることがあるので注意しましょう。その点、水泳・水中歩行・サイクリングは腰や膝関節への負担が少ないので安心です。また、運動を行う際、脈拍数が一分間に100から〔180マイナス年齢〕の範囲になるようにしてください。運動開始後5分ぐらいで脈拍を測り、脈拍数がこの範囲におさまるように運動の強度を調整します。
 血糖は食後1〜2時間ぐらいの間に高くなりますので、この時間帯に運動するのがよいでしょう。食事直後や早朝・深夜の時間帯は運動により血液中のブドウ糖が消費され過ぎて、低血糖とよばれる状態を起こすことがあるので避けてください。
 運動の回数ですが、1週間に3回から5回、15から45分間程度の運動が必要です。規則的に一定の時間を決めて行ってください。
 運動療法は、無理なく続けられる自分なりの運動の方法を工夫し、毎日継続することがなにより重要です。