広報誌「かけはし」
■2001年11月 No.362
時評
●拠出金制度の廃止なくして抜本改革とは言えない
   「試案」に批判集中
   9月25日に厚生労働省が発表した「医療制度改革試案」に対する各団体やマスコミの意見、論調も一通り出そろって、いよいよ抜本(構造)改革は大詰めを迎えようとしている。
 その試案に対する意見、論調は、「将来に対するビジョンがない」「財政対策の色彩が強い」「患者等国民負担のみが際だっている」といった批判的なものに集約されている。
 現行制度の改革を行うとき、各方面みんなが満足するということは至難のことである。ましてや今回のように「痛み」をともなう場合は、なおさらのことであろう。
   
   健保組合の悲願を無視
   そのような難しさはあるとしても、健保組合を担当する者として、この試案に対する最大の不満は、拠出金制度に「触れていない」ことだ。
 健保組合関係者にとって、「医療保険制度の抜本改革」とは「拠出金制度を廃止すること」であったはずだ。健保組合に過大な負担を強いるようになった拠出金制度に代えて、新しい高齢者医療保険制度の確立をめざすこと、この悲願を厚生労働省が知らないわけはない。
 「触れていない」ということは「存続させる」ということだろうが、「触れるのを避けている」という印象だ。
 この点だけをみても、この試案が、「一時凌ぎの財政対策である」の批判を免れ得ない。
 小泉首相は、「恐れず、ひるまず、とらわれず」の姿勢で改革を断行したい、と言っている。しかし、この「試案」には改革断行の姿勢がまったく見られない。「触れない」こと自体、健保連、健保組合をないがしろにしていると言える。
   
   「廃止」へ仕切り直し
  健保連本部では、われわれの主張実現のため、各組合の総意を結集したいとして、組合毎に決議書あるいは決意書の提出を求めてきた。
 大阪連合会作成の決議書(または決意書)案の第1項目が本部案と異なって、「拠出金廃止」になったのも、これだけはなんとしても実現したいの思いが、傘下の組合に強いということである。
 これまでも、その力量を疑問視されることがある健保連だが、ここは踏ん張りどころだ。そのためには各健保組合の後押し、経営者団体および連合との共闘が必要なのは言うまでもない。
 試案では無視された「拠出金廃止」だが、まず俎上に載せねばならない。
 もう一度仕切り直しだ。
  (ゆ)