広報誌「かけはし」
■2001年8月 No.359
中央病院市民教室

*** 胃カメラだけで治療も学会がガイドライン ***
胃がん王国・ニッポン
 最近、幸いなことに胃がんにかかる方も、胃がんで亡くなる方も減ってきております。しかし、諸外国と比べるとまだまだ胃がんは多く(米国白人の5〜10倍)、未だ世界に冠たる胃がん王国であることは間違いありません。
 胃は、口〜食道〜胃〜小腸〜大腸〜肛門の消化器の流れの中で、食べたものの貯留、消化の役割を果たしています。胃の壁は、粘膜〜粘膜下層〜筋層〜漿膜の層構造をなしていますが、胃がんは粘膜から発生します。この粘膜から発生したがんは、胃の粘膜に沿って広がるだけでなく、前記の胃の壁を破って広がってゆきます。この過程で、血液の流れにのって広がると肝臓あるいは肺、骨などへの転移ということになります。

大阪中央病院
外科医師
山口 時雄 氏
また、リンパの流れにのると胃の周りのリンパ節へ転移していきます。胃の壁を破って腹膜にがん細胞が散らばってゆく広がり方もあります。

治療は手術が中心
 胃がんの診断方法は、胃透視(いわゆるバリウムを飲む)、胃カメラなどで行われます。胃カメラの際には、腫瘍の組織を一部採取して、病理診断もなされるのが一般的です。もし、胃がんと判明すれば、治療方針(進行度診断)の決定のため、CT and/or 超音波検査などがなされます。
 治療は手術が中心となりますが、日本中どこでも同程度の治療が受けられるように、胃がん学会がガイドラインを提示しています。医師用のガイドラインは既に刊行されており、現在、患者さん向けのガイドラインが検討されています。
 手術は、胃がんの大きさが小さく、その深さ、組織型(がんの顔つき)によっては胃カメラのみの治療も可能なまでに進歩してきています。逆に、ある程度以上進行した場合は、大がかりな(拡大)手術、制がん剤、免疫療法等々組み合わせて治療しても、未だ満足すべき結果は得られていないのが現状です。そういう意味でも、早期発見は大切でしょう。
 ただ、一口に胃がんといってもその振る舞いは千差万別です。がんは、身体のルールを無視して、勝手に増殖、転移して、身体を破壊するという意味では、人間社会ではヤクザに例えることができます。

担当医の十分な説明を
 また、同じ進行度であっても、部位によって手術方法に差がでてきたりします。これは人間の身体は解剖学的要因にも規定されており、前歯の治療法と奥歯の治療法(保険が利く利かないも?)が異なるのと同じです。
 もし胃がんと診断されたら、ガイドラインをはじめとして情報収集されるだけでなく、担当医より納得ゆくまで説明を受けて治療を受けることが大切です。また、場合によってはsecond opinion(他の医者の意見を聞く)もお勧めします。
 大阪中央病院では、second opinionを希望される患者さんには、いずれの場合(大阪中央病院→他院、あるいは他院→大阪中央病院)にも柔軟なスタンスでのぞんでいます。何かあれば、気軽にご相談ください。