広報誌「かけはし」
■2001年8月 No.359
時評
 ●保険者機能の強化 −医療機関情報の提供を−
 


制度改革の考え方

 政府は、経済財政諮問会議がまとめた「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を6月26日に閣議決定し、公表した。この基本方針は平成14年度政府予算編成をはじめ、中・長期的視点に立った構造改革を通じて経済社会の再構築を目指すもので、社会保障、特に医療制度の改革について考え方が述べられている。
 特に、医療費総額の抑制、老人医療費の負担のあり方、保険者機能については、検討課題として取り組まなければならない事項と考えられる。この課題のうち、医療費総額の抑制、老人医療費の負担については先月号で述べられているので、保険者機能の強化について触れてみたい。

患者の利益を優先
 保険者機能はかなり幅広い概念を持つものであるが、我国の医療の現状では、なによりも患者の利益を優先して機能を発揮していくことが重要である。医療については、患者は医師に比べ医療に関する情報が圧倒的に不足しているので、保険者ができるだけ医療情報の提供などを行うことにより、患者が自ら医療機関を選択し、自己の治療方法などを決定できるように支援することで患者中心の医療が実現できると考えられる。
 患者にとっての最大の関心は、どの医療機関を受診すれば最適な治療が受けられるのかということである。そのために患者が本当に必要とする情報とは、どのような内容の情報か、例えば、医療機関の所在地、機能、提供される医療の質、サービスの内容、などである。また保険者が必要とする医療機関情報とは、業務上必要なレセプト点検等、また被保険者やその家族からの相談を求められたときに必要な情報が考えられる。

急がれるネット整備
 健保連は、患者中心の医療実現のため医療機関情報提供サービスをインターネット上で行うことを検討している。健保連大阪連合会では、健保組合向けの情報提供サービスをすでに開始しているが、これは一般国民への情報提供としてそのまま公開するには、一般患者の情報ニーズに合致しているとはいい難い部分もある。患者中心の医療の実現のために保険者の代表として、健保連はインターネットによる情報提供体制を早急に構築すべきである。