■2001年7月 No.358
*** PSAで早期発見を 日本人に増加傾向
***
前立腺は一体どこにあるのでしょうか?
前立腺とは膀胱をすぐ出た後の尿道を取り巻いている球状の組織で、重さは約20g、男性にしかない臓器なのです。役割は様々な分泌液を出していますが、それが生体内でどのような意味を持つのかあまりわかっていません。この20gの前立腺が大きくなると前立腺肥大症、がんになると前立腺がんです。この2つはまったく別もので年月が経ち肥大症ががんになるということはありません。しかし、肥大症の細胞の横にがんができることは十分ありえるのです。肥大症とがんは合併しうるということです。もちろん肥大症のない人もがんはできます。
大阪中央病院
泌尿器科医師
木内 寛 氏
前立腺がんは人種的に発生頻度に差があり、米国黒人が多く、ついで米国白人で、日本人は非常に発生頻度が低くなっています。ハワイに移住した日系人は面白いことに米国白人と日本人のちょうど中間ぐらいの頻度でがんになることがわかっています。つまり、日本人がハワイに住むと前立腺がんになりやすいのです。これはがんの発生には遺伝的要因に加え、環境的要因が含まれていることを示しています。最近の日本人の食生活が欧米化しているため、以前と比較して前立腺がんの発生頻度が非常に高くなっており、2015年には1995年と比較しておよそ3倍になると言われています。前立腺がんは様々ながんの中で、今後最も増加するがんなのです。
がん検診で前立腺がんが発見される確率は0・86%。これはその他のがんに比べ、6〜17倍も高い発見率なんです。なぜこれだけ前立腺がんが見つかりやすいのでしょうか。それは前立腺がんが”PSA“という血液検査で見つかるからです。PSAは非常にすぐれた腫瘍マーカーで、このおかげで症状のない早期の前立腺がんも発見できるようになりました。(以前の前立腺がんは骨転移があって、その痛みで発見されることが多かった。)PSAが4以上であれば前立腺がんの可能性が出てきます。(ただしPSAが4以上あれば前立腺がんということではなく、あくまでもがんの可能性があるからもっと詳しく検査しましょうという指標になるのです。)さらに直腸診、前立腺エコーと検査を行い、最終的には前立腺の組織を取って確定診断となります。
このように検診で見つかることが多く、早期であれば治療成績のよい前立腺がんですが、まだまだ検診の受診者が少ないのが現状です。毎年検診を受けている方も、もう一度自分の検診結果を確認してください。そこにPSAが入っていますか。もし入っていなかったら一度測定することをオススメします。
前立腺は男性の膀胱の出口、尿道の始まりの部分を取り囲んでいるクルミ大の臓器で、精液の一部を作っています。構造はちょうどみかんに似ていて、皮の部分を外腺、実の部分を内腺といいます。
前立腺がんは皮の部分、外腺が夏みかんのように分厚く凸凹になった状態です。