広報誌「かけはし」
■2001年7月 No.358
   6月14日、健康教室を薬業年金会館で開催。大阪大学医学部形成外科の矢野健二助教授がスライドを使って講演しました。
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形成外科治療の実際と最新の進歩
     
●社会への適応が目的
投影画面を操作する 矢野助教授
  「形成外科とは先天的あるいは後天的な身体外表の形状、色の変化、すなわち醜状を対象とします。これを外科手技によって機能はもとより形態解剖学的に正常にすることを手段としています。それによって個人を社会に適応させることを目的としています」と定義されます。
 対象疾患は頭のてっぺんからつま先まで身体の部位すべての醜状です。醜状には先天的なものと後天的なものがあります。先天的なものとしては、
  @生まれながらの奇形、A狭義の醜状である美容があり、後天的なものとしては、Bけがをしたりした時の外傷性の醜状、C悪性腫瘍を取り除いたときにできる醜状があり、以上の4つが形成外科が取り扱う大きな対象です。
   
●最新のレーザー治療
   治療法としては、@創傷治療。これは保存的治療で、軟膏を塗ったり消毒したりし人間の回復力によって治療するものです。そして皮膚の表面にできた醜状、変形を削ったりドライアイスを当てたりするA皮面形成術。皮面形成術で治らない場合は、切り取って縫うB縫縮術。切り取って縫い寄せられないときは、他の部位から皮をとって植えてやるC植皮術。その他、D皮膚以外の組織移植術。自分の組織で賄えないときに行うE人工形成資材埋入術。それでも治らない場合はF化粧法といって、表面を隠して化粧をしてやる治療もあります。
 ここ20年くらいのことではありますが、最近の形成外科の進歩として「筋皮弁」、「マイクロサージャリー」、「ティッシュエキスパンダー法」、「レーザー治療」があります。
 「筋皮弁」ですが、皮膚の血行を保存したまま移植してカバーするのを皮弁といいますが、普通の皮膚だけでは先端の血行が悪くなります。しかし、皮弁に筋肉をつけて移植すれば非常に血行が良くなるということで開発されたのが「筋皮弁」です。顕微鏡の下で1〜2oの血管をつなぐ「マイクロサージャリー」は、形成外科の非常に大きな進歩のひとつですが、これにより組織移植などが可能になりました。「ティッシュエキスパンダー法」というのは、正常な皮膚の下にシリコンの風船を入れ、膨らますことで、皮膚を伸ばし目的としたところをカバーするものです。「レーザー治療」は、特に最近進歩し、体表面のアザや良性腫瘍をきれいに取り除くレーザーがでてきています。
 

迫力のある映像に見入る参加者